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早すぎる真似事

 




 セオドアは言うが早いか、アミィールに唇を重ねた。押し倒す形で倒れ込み、甘く蕩けるようなキスをする。…………もっともっと愛で満たして欲しい。限度なんてない。



 父親で夫。


 サクリファイス皇族で皇配。



 沢山の肩書きがあるけれど、どれもこれもこの人と子供達が居れば、乗り越えられる。



 「ふ、………セオ、もっと」



 「っ、ああ…………アミィ」


 セオドアはキスをしながらアミィールの夜着に手を滑り込ませ____「………!」



 「………?」



 蕩けた顔をしていたアミィール様の黄金色の瞳が見開かれた。口をぱくぱくと動かして一点を見つめている。疑問に思ったセオドアも振り返った。



 「____ッ」



 そして、言葉を失う。

 何故なら___空中で、双子達が今の自分達と同じようにキスをしていたから。ご丁寧に服に手までいれて…………って!



 「2人とも………それはやめなさい………」



 「う?」


 「む?」



 「……………セオ様、申し訳ございません………」



 アミィールは自分の顔を両手で抑えるが真っ赤な耳まで隠せず、セオドアは子供達を直視出来なかった。



 不思議な両親たちに、双子達はきょとんとしながら見守っていたのだった。



 _____この日から主人公夫婦は『双子が皇帝夫婦の所で眠る時だけそういうことをしよう』というルールを作ったのは別の話。






 * * *





 そう決めたとはいえ、優秀な子供達に見られたという事実は消えないわけで。




 「んー」



 「むー」




 「ぶふっ」




 「…………………」




 子供達は俺の部屋のベッドの上でキスをしている。浮遊魔法で僅かに浮いているアドラオテルが寝転んでいるセラフィールを押し倒して何度も唇を重ねている。そして執事のレイが声を殺して笑っている………って!



 「笑うな、レイ!」



 「いや、だって、これは笑うだろ~、生後3ヶ月の赤ん坊がわざわざ浮遊魔法を使ってこんな濃厚なキスをしているんだぜ?


 物凄いテクニシャンじゃねえか。どこの誰がこんな手管を教えたのかなぁ~?」



 「ッ、アド!やめるんだ!」




 「ヘッ」




 「~ッ、アードー!」



 急いで止めに入る父親を鼻で笑う男の子。父親はそれを見て顔を真っ赤にし、涙目で『まだ早い、まだ早いぞ!』と訴えたのだった。



 「きっとアドラオテル様は女たらしになるなあ。わからないことは俺に聞けよ、アドラオテル様」



 「お前は少し黙ってろ!」








 * * *






 ある日の話。




 「………………」




 「うー?」




 アミィールは執務室にて難しい顔をしながらソファで子供にしては難しめの本を空中に浮かべて寝転びながら読んでいる娘、セラフィールを見ていた。



 …………………あの子が生まれてもう5ヶ月が経ちました。けれども、未だに寝返りをしないのです。



 お母様が言ってました。魔法が使えて自由に動けるからと子ども自身が発育を怠る、と。実際わたくしも歩けるようになったのは2歳らしく、それまで空中歩行していたそうなのです。



 魔法は便利です。使えるだけでそれは素晴らしいことです。



 けれど。




 それで身体の発育が遅くなるのは如何なものかと思うのです。だからといって魔法を使えなくするのはセラフィールの自由を奪うことになるのでは…………?



 そもそも。



 わたくしは未だにセラフィールとの関わり方が分からずにいるのです。…………情けない母親です。アドラオテルの方は活発に自分から剣で攻撃してくるので御相手出来ます。中々にやりごたえがあるので好きです。楽しめます。



 けれど…………セラフィールはセオドア様に似てとても内向的な子供です。まるで、わたくしと出会った頃のセオドア様を見ているようで………可愛いのですが、距離の縮め方がわかりません。



 産まれる前こそお腹から声が聞こえていて、言葉を交わせましたが産んでからはそれがなくなって………情報伝達が出来ているのか不安なのです。



 不甲斐ない、不甲斐ない。



 このままでは身体的にも精神的にもセラフィールの発育に問題が出るのか、怖いのです。


 ____人殺しなどせずに、もっと子供と関わればよかった。


 今更後悔しても無駄だと分かっていても、後悔してしまう。浅ましい人間なのです。










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