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励まされる主人公

 



 「ぶーぶ!」



 「ぱー!」




 「……………ッ」




 2人の大事なもの、それらを俺の前に置いて、抱き着いてきた。3ヶ月が経ったというのに未だ小さな、小さな身体。




 その小さな存在と温もりに、自然と涙が出てきた。



 ___俺、凄く情けない。

 子供達はこんなに俺を慕ってくれているのに、勝手に凹んで、勝手に悩んで…………この子達が俺を見てくれているのに、『普通』とか『どうあるべきか』とかそんなのばっかり考えていた。



 けれど。



 この子達が成長していくのと同時に成長していけばいいだけだろ、俺。



 最初から後ろ向きになるな、俺。



 セオドアは急いで涙を拭いて、自分にしがみついている子供達を纏めて抱きしめた。




 「セラ、アド、…………ありがとう。


 俺はちゃんとお前達の親になるからな。一緒に____居させてくれな」



 いつもと違う鼻声の父親の声、それを聞いて双子は再び顔を合わせた。しばらくきょとん、としていたけれど、すぐに父親を見てにぱ、と笑った。



 それを見たセオドアも____笑顔で答えた。




 「セラ、アド。絵本でも読もうか」



 「ぶー!」



 「はは、セラ、昨日難しい本は読んだだろう?今日はアドの好きなものを読む番だ。セラはまた明日。



 アドは何が読みたい?」




 「あうー!」




 セオドアはフグのように膨れるセラフィールを優しく撫でてから、アドラオテルを見る。アドラオテルは待ってました、と言わんばかりに可愛い動物が描かれた絵本を差し出してきた。



 セオドアは2人に囲まれながら、終始優しい笑みを浮かべつつ、優しい声色でそれを読んであげたのだった。




 * * *





 「セオ様、お待たせ致しました」




 「ああ、お疲れ、アミィ」




 「セオ様も……………あら?どうして此処でセラとアドが寝ているのですか?それにこんなに玩具を…………」




 風呂上がりのアミィールはセオドアの自室に来て首を傾げた。子供達はすこすことひと一人分の隙間を開けて、おもちゃに囲まれて寝ていた。



 セオドアは満面の笑みで『なんでもないよ』と言う。その目元は少し紅い。それに気づいたアミィールはそ、とその目元に触れた。




 「セオ様、___泣きました?」


 「え、………っと、その…………」



 セオドアはモジモジとする。それが肯定を現しているとわかるのに3年という月日は十分な長さだった。アミィールはとりあえずセオドアの腰を抱いてソファに誘う。



 そして、詰め寄った。



 「子供達が、何かをしたのですか?」



 「ううん、……………励まされたんだ」



 「?」



 首を傾げるアミィールに、セオドアは天井を見上げながら独り言のように言う。



 「俺は、未熟なくせに、一丁前に『普通』とか『親だからできて当然』とか………そういうことばかり考えて、子供達をちゃんと見てなかったんだ。



 それで勝手に凹んでいたら、子供達が『こっちみて!元気だして!』ってしてくれているみたいで……気付かされたんだ。


 最初から親のなり方がわからないのは当然で、だからこそ頭を抱えるけれど、わからない時は子供達と一緒に成長して行ければいいじゃないか、って。



 ………格好悪いだろう、すごく」




 セオドアはそういって力なく笑う。

 そんな愛おしい男を、アミィールは優しく引き寄せ、頭を抱いた。



 「____セオ様は、格好悪くありません。仮に間違ったとしても、そうして気づいて反省できるじゃないですか。


 素直に言葉にできるじゃないですか。………わたくしは、そんな貴方をお慕いしたのです。わたくしは誇らしいのです。



 だから___格好悪くなど、ありません」




 「……………アミィ」



 セオドアはアミィールの胸の音を聞きながら、心地よい愛おしい女の声を聞いていた。……………俺にはこうやって、受け止めてくれる人が居て、教えてくれる人がいて。



 だから、大丈夫。



 どんなに悩んだって____大丈夫、なんとかなる、と思えるようになる。



 そう思えるのは家族のおかげで。


 ____最愛の妻と最愛の子供達のおかげなんだ。



 そう思うともう溢れかえっているというのにまた愛おしさが湧き出てくる。悪い思考を塗りつぶすように、そればかりになる。



 「____アミィ、キス、したい」



 「ええ。………しましょ………っん」




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