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主人公の愛息

 



 「セオドア様、お連れしました」



 「ありがとう、エンダー」



 セオドアはエンダーの姿を見るなり駆け寄る。



 ……………そんなこんなでセラフィールと午前中を過ごして、昼頃にアミィール様の侍女・エンダーがアドラオテルを連れてきた。アミィール様自ら連れてきたいと言っているが、このアドラオテルはとてつもなく面倒くさい性格をしているのだ。



 アドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイス。

 俺と同じ群青色の髪、セラフィールと同じ綺麗な黄金と、サクリファイス大帝国皇族特有の紅い瞳を持つ息子。




 性格は自由奔放で悪戯好き、活発で好奇心旺盛とセラフィールとは真逆のタイプ。俺達夫婦よりも祖母に当たるアルティア皇妃に性格が似てると思う。



 そして、面倒くさいというのは。



 セオドアはアドラオテルに向かって両手を広げる。




 「アド、おいで」



 「………………」



 呼んでもツン、と顔を背ける我が息子。………またこうなるのか………



 セオドアははあ、と溜息をついてエンダーに『失礼』と一言述べてアドラオテルをエンダーから引き剥がそうとする。アドラオテルは赤ん坊のくせに力が強く、意地でもエンダーから離れない。



 最初こそ『嫌われている?』と思ったが、どうやらそうではない。この息子は___とてつもなく"女好き"なのだ。



 信じられるか?こんな可愛い顔しているけれど女の人が大好きでアミィール様とセラフィール、アルティア皇妃様以外の女には徹底的に愛想を振りまく。こうしてエンダーが連れてきてくれるのも、アミィール様の腕ではなくエンダーの腕の中に逃げ込むからなのだ。




 で、今もこうして引っ張っている間にもエンダーの胸に顔を埋めてアハアハ笑っているのだ。凛々しい顔をしているから尚更シュールなのである。



 「アードー!パパの所に来なさい……!」


 「ふぐぅ………!」



 「…………あの、セオドア様、アドラオテル様、美しいお顔が崩壊しております」




 エンダーの冷めた声を聞きながら親子は我慢大会をし、疲れたアドラオテルを何とか腕の中に収めたセオドアでした。





 * * *





 午後14時。セオドアとアドラオテルは鍛錬場にいた。



 「ふっ!」



 「ぎゃん!」



 セオドアの木刀が兵士の鳩尾を捉える。兵士はその場に蹲るのを見ながら、腕で汗を拭う。



 …………このくらいにしておかないと、またガロに勝負を申し込まれるな………ここらへんで切り上げ____!?



 不意に危険を察知して、木刀を慌てて構えながら後ろを振り向いた。それと同時に木刀が勝手に襲ってくる。それを受けると、身体が横に流れた。



 見ると____沢山の木刀を宙に浮かせた、アドラオテルの姿が。



 「アド、危ないからゆりかごに居てって言っただろ?」



 「ふひ!」



 そう言って破顔する。青い光を纏った剣達の矛先が全てこちらに向けられている。


 ……………アドラオテルは剣がとにかく好きなのだ。こうして鍛錬をしているとゆりかごから勝手に出てこうして勝負を申し込んでくる。男子としては頼もしいが、生まれて3ヶ月だぞ?早過ぎないか?


 「アド、やめてパパの所においで」



 「べー!」



 「…………」




 このとおり、言うことは全く聞かない。反抗期が早いんだよ!アミィール様に似てるから怒りづらいしなんというか……扱いづらい!


 そんな困ったセオドアはもう既に準備していた皇族専属側近達に声をかける。



 「リーブ様!ガロ様!どうか御手を貸してください!」



 「ええ、そのつもりです」


 「刃を向けることをお許しください、アドラオテル様」



 大袈裟だと思うだろう?しかしアドラオテルは本気でマジで大真面目で強い。手を抜いたら正直死ぬ。木刀で人を殺せるくらいには強いのだ。首が座ったばかりの子供がだぞ?怖すぎるだろう、首が座ったばかりの子供に首を切られそうになるんだ。



 「行きます!」



 「は!」


 「失礼します!」




 3人は悠々と浮いているアドラオテルに向かって走った。



 ____10分後、セオドア達がボロボロになった頃に『暇つぶし』に来たサクリファイス大帝国皇帝・ラフェエルが来るまでアドラオテルは止まらなかった。














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