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側近達は困り果てる

 


 ガロはそう言って戸惑いながら改めてセオドアの身体を見る。



 セオドアの前と後ろには___抱っこ紐に守られた、アドラオテルとセラフィールの姿があった。


 そうなのだ。この2人を抱えて教育を行おうとしているのだ。なんの疑問も持たずに、やろうとしているのだ。



 これには流石のベテラン側近も狼狽える。



 「セオドア様、御子達はあぶのうございます。どうか、ゆりかごの方に………」



 「それはできません、私が離れている間にこの子達に何かあったらアミィール様に合わせる顔がございません故」



 「………本心をお教え下さい」



 「……………子供達と離れたくないです」



 「…………」


 「……………」



 ぽつり、そう呟いたセオドアに開いた口が塞がらない側近達。しかし、セオドアは本気である。



 …………アミィール様は今、産後の疲れで寝ているんだ。その間この子達の面倒を見るのは俺だ。本来王族というのは乳母に任せると聞くが、俺たちはそれを受け入れなかった。話を聞くとアルティア皇妃とラフェエル皇帝も自分たちでアミィール様を育てたという。当たり前だ。自分の子供は自分で育てる。親として当然だ。だから俺は片時も離れないと決めた。



 …………まあ、これは表面的な理由で。本心は『子供たちから離れたくない』のだ。俺の子供達だろう?こんなに愛らしいだろう?離れられる方がおかしい。こんな可愛い子達をゆりかごに放置なんて俺はできない、無理、いやだ。




 すっかり正常な判断が出来なくなっているセオドア。側近達はお互いの顔を見合わせて頷く。こうなったら別作戦で引き離すしかない。


 「………セオドア様とアミィール様の御子達はとても可愛いですね。セラフィール様はセオドア様に似て、アドラオテル様はアミィール様によく似ていらっしゃる。


 そう思いませんか?リーブさん」



 「ええ。ガロの言う通りです。愛らしい御子達ですね」



 「!リーブ様、ガロ様、分かってくださいますか!?」



 セオドアは目をキラキラさせながらやっと話を聞いた。付け入るならここだ、と悟った2人はさらに言葉を重ねる。



 「ええ。それはもう。セラフィール様は1輪の花のよう、アドラオテル様は狼のような………」


 「そのお二人の未来を考えて、ここで傷つくのは「そうなんですよ!」わっ」




 セオドアはガロが言い終わる前にずい、と前のめりになった。鼻息を荒くし、顔を赤らめてペラペラと語り出す。




 「セラは花なのです、私に似ているからアミィのように美しくとはいきませんが、それでも可愛らしくて寝顔なんてもう宝石より輝いていて、そして絵本を読んであげると目をキラキラさせるのです!ぬいぐるみを動かすのが上手で私と一緒におままごとなんてできるんですよ!?凄いですよね!




 アドは好奇心旺盛で新しいものを見ると『おお~』なんて言葉を喋れないのにリアクションを見せてそれを目で追うんです。アミィのように気高く美しく私と違って男らしさがあるのです!剣が好きで沢山の剣を宙に浮かせて手足のように操るので私などよりもずっと強くなるのです!



 その2人の瞳がオッドアイですよオッドアイ!しかも黄金色以外違う色で…………ガロ様もお綺麗なオッドアイですが私の子供達もそれはもう綺麗で愛らしくて…………」




 「……………」



 「……………」



 ………この日の教育は急遽中止になった。

 それだけでは留まらず側近達を含め鍛錬場にいた全ての兵士を集めて『子供達自慢』を6時間もしたセオドアだった。











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