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侍女と執事と赤ん坊達

 



 「……………アミィール様は感情表現が上手くなりましたね」




 「?そうかしら?」



 「ええ。セオドア様と出会ってから、貴方様はとてもお変わりになりました」




 わたくしの専属侍女・エンダーはそう淡々と言った。

 確かに、セオドア様と出会うまでこんなに表情筋が動いたことはなかったように思う。セオドア様と関わっているだけで頬が緩み、温かい気持ちになる。ほかの令嬢達と話したりする時よりずっと動いていたと思う。



 これは。


 「………これは、いい変化なの?悪い変化なの?」



 アミィールがそう聞くと、エンダーは少し驚いた顔をしてから、あからさまに呆れてみせた。



 「悪いわけがないじゃないですか。あなたはどこまで鈍感なのですか」




 「…………」



 最近、エンダーがセオドア様の執事のレイ様がセオドア様と2人で居る時のような砕けた雰囲気で話しかけてくるようになった気がします。淡々と主人を否定するような。…………これも、きっといい変化、なのでしょうね。




 そんなことを思いながら、母乳を飲んだアドラオテルの背中をなれない手つきでぽんぽん、と叩き、ゲップをさせた。






 * * *









 「すう………」



 「ふふ、可愛いなあ、可愛いなあ、可愛いなあ」




 同時刻、別室にて。セオドアは自分のベッドで寝ている紅銀の産毛の女の子・セラフィールの寝顔を見て顔をこれでもかと緩めて見ていた。



 それを観察しているのがセオドアの執事・レイである。



 ………今の『可愛い』で500回目だ。産まれたばかりで浮かれているのはわかる。だが、語彙力が死にすぎていないか?アイツ。




 とはいえ。



 レイは遠目からセラフィールを見る。

 …………産毛こそアミィール様と同じ紅銀だが、誰がどうみても女版のセオドアである。今は寝ているから見えないが、左目はセオドアと同じエメラルドのような緑色の瞳。自分の顔が整っていると本人こそあまり気にしていないが街ゆく100人が全員振り返るような美男子に似たのだから、この皇女も可愛くなるのだろう。



 もう20年歳を取ったらアミィール様がセオドアにしたように俺に求婚しないかな………いや、その前に俺はエンダーと結婚しているだろう。




 そんなことを考えにやけているレイはふと、気づく。セオドアが憎らしげにこちらを見ているのだ。




 「どうした?セオドア」



 「…………お前、今、セラをいやらしい目で見ていただろう」



 「は」



 「ダメだからな。お前には俺の可愛いセラをやらない!というか!こんな可愛い娘に男など作らせないぞ俺は!」




 「………………」




 これには流石のレイも閉口する。

 流石の自分も0歳の、主人の子供の、主人に似た赤ん坊にそんな感情を本気で抱く訳が無い。この馬鹿はどこまで馬鹿なんだ?頭おかしいを通り越して気持ち悪いな。



 「ぜったい、セラには触れるなよ!」



 「う?」



 「あ、セラ、起きたのか、おはようセラ、パパと遊ぼうね~」



 「うう?」



 セラフィールが起きた瞬間人が変わったようにデレデレに戻るセオドアを見て、悪霊でもついてるのか?と不安になったレイでした。








 * * *





 「セオドア様…………」



 「なんでしょうか!」



 鍛錬場にて、ガロとリーブは顔を顰めながらセオドアに声をかけた。セオドアは満面の笑みで返事をする。しかし、笑えない事態が起きている。リーブは困った顔で言葉を紡いだ。




 「あのですね、これから私達と鍛錬をするという約束で………」



 「?そうですけれど?今日は、教育の日ですよね」


 「ええ、そうなのですが………」














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