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聖女はチョロい

 







 子供達の頬をつつくという気持ちはとてもわかる。セラフィールもアドラオテルもぷっくりぷにぷに可愛い頬の持ち主だ。俺だって暇さえあればぷにぷにしていて、アミィール様に「起きてしまいますよ」と笑いながら注意される。


 俺はやっていいけどこの酔っ払いムードメーカー聖女にはやって欲しくない。親の独占欲というものだ。



 とうとう、ベッドの上で黙っていたアミィール様が口を開く。



 「フラン様、お戯れはそろそろおやめ下さい。わたくしの部屋に土足で上がり込んでそのようなことをなさるというのは余程命知らずなことと存じ上げます」



 「大丈夫☆アルティア先輩に『今なら産後で動けないから触り放題だよ』って言われてきたから!


 私は安全にセラフィールちゃんとアドラオテルくんの頬をむにむに~ってするの!」



 「あの人格破綻者…………セオ様、申し訳ございませんが、フラン様を痛めつけてやってくださいまし」



 「ぬぬ!やるかお父さん!」



 「お父さん…………!」



 フラン様が拳を構えながら言ったお父さん、という言葉にじんわりと心が熱くなる。『お父さん』と言う言葉がエコーして俺は宇宙空間に落ちていった。



 花が舞うように蕩けた顔をしたセオドアを見て、アミィールは『レイヴ』と呼ぶ。


 すると、人型のダーインスレイヴが現れた。そのダーインスレイヴの服を掴む。状況のわからないダーインスレイヴは首を傾げた。



 「なんだい?アミィール」



 「フラン様、出ていってくださいましたらダーインスレイヴを丸一日貸して差し上げますわ。抱こうがキスをしようが好き放題なさってもらっていいです」



 「ほんとっ!?」



 アミィールの言葉にぱぁ、とフランは顔を明るくし、ダーインスレイヴは『げっ』と声を漏らして顔を引き攣らせた。フランはぎゅ、とアミィールの手を掴んでニコニコする。



 「わかったわ、これはいい取引………アミィールちゃん、お主も悪よのう?」



 「いえいえ、フラン様には負けますわ」



 「…………」



 宇宙空間から戻ってきたセオドアは、ドラマの悪代官がやるシーンを見て、ダーインスレイヴから離れて子供達を抱きしめた。ダーインスレイヴの助けろという視線は無視の方向で。未だにピアスの件は許していないから。



 「セラ、アド、こっちで遊ぶよ」



 「ぷーぅ!」


 「うきゃ~!」



 「セオドア、待ってくれ!」



 「行きましょう、ダーインスレイヴ様♪」



 「永遠にさようなら」





 この後ダーインスレイヴがどうなったのかはフラン以外誰も知らないのだった。






 * * *






 「エンダー、この書類を伝達魔法にて、アイスバーンに送ってくださいまし」



 「かしこまりました」




 わたくしは最近ベッドの上で執務を行っております。体もだいぶ良くなって、もう執務室には行けるのですが、お父様が『しっかり1週間は休め』とわたくしに言ったのです。ベッドの上での仕事は嫌だから、と言おうとしましたが、自室にてセラフィールの面倒を見てくれているセオドア様が目を潤ませた子犬のような顔で『アミィ、休も?』と仰って下さったので、言うことを聞いております。



 それだけでなく。



 「あぶー!」



 「あら、お腹が空いたのですか?」



 そう考えていると、群青色の産毛の黄金と紅の瞳の男の子・アドラオテルが声を上げた。アドラオテルは男の子だからかお腹が空きやすく、執務中も傍に置いているのです。もちろん、日によってはセラフィールを見ていることもあります。どちらも大切なセオドア様の御子なので、平等に愛を注ぐつもりです。




 「んっ」




 アミィールはそんなことを思いながら脱ぎやすい服を脱いで、アドラオテルに母乳を上げる。ぴく、と身体を揺らした。………セオドア様に営みの際、執拗に責められているのでわたくしの胸の突起は敏感なのです。




 「………アミィール様、自分の子……ましてや赤ん坊相手にそのように感じないでくださいませ」



 「…………生理現象よ」



 「セオドア様が見たら、嫉妬するでしょうね」



 「…………」



 それは言われなくとも知っております。母乳をあげる度に顔を赤らめながらも子供達を憎らしげに見ているのをわたくしが知らないわけがありません。



 アミィールはその光景を思い出して笑みを零した。








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