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爽やか国王と酒の席

 


 もちろん、セラフィールやアドラオテルが産まれて嬉しいのは身内だけではない。




 この人達も、喜んでくれたんだ。





 * * *






 「セオドア殿、ラフェエル、おめでとう」



 「ありがとうございます、クリスティド国王陛下」



 目の前には___高級なワインの入ったワイングラスを片手に爽やかな笑みを浮かべるシースクウェア大国国王陛下、クリスティド・スフレ・アド・シースクウェア様だ。セオドアはセラフィールとアドラオテルを抱きながら、丁重に頭を下げる。



 セオドアの隣に座るラフェエルはさも面倒だと言わんばかりの顔で同じく持っていたワインを口に着けた。


 「____クリスティド、お前は暇なのか?


 国を放ってサクリファイス大帝国に来るなど愚かすぎるだろう」



 それに関してはラフェエル皇帝様も言えない気がする。子供が出来た時、国を放ってヴァリアース大国の俺の家にお忍びで行ったのだから。………とは、口が裂けても言えないが。


 そんなことを考え子供達をぎゅう、と抱き締めるセオドア。クリスティドは高らかに笑う。



 「ははは!孫が出来てもラフェエルはラフェエルか。何も変わらないな」



 「ふん、子供が生まれたくらいで私が変わるわけがなかろう」


 「…………と言ってる割にはセオドア殿の胸にいる子供を3分に1度は視線を向けているではないか」



 「…………」



 ラフェエル皇帝様は黙る。

 本当にそうなのである。熱の篭った視線をひしひしと感じて俺は生きた気がしない。



 「抱きたいのであれば口に出さなければ」



 「………………べつに、そのようなことは思っていない」



 「ではセオドア殿、これから先ラフェエルに子供達を抱かせるな」



 「な…………!貴様巫山戯るな!」



 「わっ」



 ラフェエル皇帝はそれを聞くなり立ち上がった。ワイングラスが倒れてテーブルクロスが紫に変わっていく。その音に子供達は目を開いた。綺麗な黄金色の瞳と紅、緑の瞳をぱちぱちしてそれを見ている。



 「ラフェエル、子供達が起きてしまったぞ。泣いたらどうするんだ」



 「私の孫はこのような些事で泣かぬ!」



 「……………」



 いや、普通の子供であれば泣く。けれども、俺の子供たちは普通ではないらしい。セラフィールはぎゅう、と俺の服を小さな手で掴んで凝視しているし、アドラオテルに至っては手を伸ばそうとしている。…………なんというか、肝が座り過ぎて赤ん坊とは思えない。



 そんな光景を見て、クリスティド国王陛下はくすくすと笑う。



 「やはりラフェエルの孫だな、豪胆だ。………にしても、綺麗な瞳だ。オッドアイと言うのだろう?」



 「は、はい」



 「君の色もあるということは、君の子種はそれだけ強力だったってことだね」



 「なッ………!」



 子種、と言う言葉にセオドアは一瞬で顔を染め上げる。爽やかイケメン国王から!子種という言葉が出た!爽やか故に変な風に聞こえないのは狡いと思う………!



 顔を赤く染めている可愛いセオドアに笑みを再び零して、クリスティドは言う。



 「せっかくの酒の場だ、酒を飲もう、セオドア殿」



 「い、いえ、私は………お酒に弱くて」



 「…………セオ、クリスティドはこんな男でも国王だ。そして私は皇帝だ。国王と皇帝の酒が飲めないというのか?」



 ラフェエルはぎろり、セオドアを睨む。セオドアはびく、と身体を揺らしてカタカタと震えた。

 パワハラ上司が言うやつじゃん…………まさか今世でもこのような横暴なことを言われるとは思わなかった…………上司の命令は絶対、古き悪しき風習は日本製のゲームに根深く住み着いているのが感じられる。


 そんなことを考えているうちに、ラフェエル皇帝が自ら酒を注いでいる。



 …………これは逃げられない奴だ………



 セオドアは意を決して、子供達をゆりかごに寝かせて、ワイングラスを手に取った。











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