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皇女の出産

 






 「っあ……」






 ____もう何時間、こうしているだろう。


 痛みの中、呆然と思う。目が眩み、視界が悪い。ただただ痛みが襲う。その痛みは、『任務』でも鍛錬でも感じたことの無い、色んな修羅場を潜ってきたにも関わらず1度も感じたことのない痛みです。



 出産というものがこんなに痛いなんてわたくしは、知らなかったです。




「アミィ………!」




 セオドア様がわたくしを呼ぶ。……………今まで見たことないくらい苦しそうな顔をしています。セオドア様はとても優しい御方。わたくしのことをいつだって心配してくれます。けれど、わたくしはそれに応えることが出来ないほど余裕がなくて。申し訳ない気持ちばかりが募る。







 けれど、それだけわたくしを愛してくれているのが伝わってきます。わたくしもセオドア様を愛しております。ここまで心からお慕いしているのはセオドア様だけで。その前も、今も、この先も…………それは一生、変わりません。




 ______セオドア様は、わたくしが子供達をちゃんと産めたら、どんなお顔をするのでしょう?



 今より泣いて喜んでくださる?いつもの笑顔よりも輝く笑顔で喜んでくださる?………ふふ、不思議、喜んでくださる未来しか、描けないのです。






 それだけ、わたくしはセオドア様から抱えきれないくらいの愛を頂き、わたくしもセオドア様といるだけで愛が溢れて、それでこの子達ができた。




 最近では、セオドア様だけではなくこの子達にも更に愛を感じ、幸せを頂いて…………今、産もうとしています。




 寂しい気持ちがないわけではありません。この愛おしく重い身体から子供達が居なくなるのです。語りかけてくることが無くなるのです。そう考えると寂しい。



 けれど。




 その代わり、セオドア様はこの子達とお話ができるようになります。触れることができるようになります。





 セオドア様は子供達のことを愛してくださいます。この出産の前からずっと、それこそ気が遠くなるくらい様々なことをしていました。





 ピアノや裁縫、刺繍に編み物、細々としたものを自ら作り、取り揃えておりました。ですが、この子達の将来やわたくしの血による『呪い』や『代償』のこともあり不安がない訳ではありません。



 ………………けれど。




 それでも、わたくしはこの子達に出会いたい。愛情を沢山注ぎたい。お顔を見たい。…………セオドア様の御子、わたくしの子供達で、一緒に幸せになりたい。








 だから、わたくしは_____わたくしのすべき事は。



 この子達をしっかり、産むこと。


 この子達を傷つけることなく、この世に誕生させること。




 ……………嗚呼、人を殺すことしか出来なかったわたくしが、こんなことを思える日が来るなんて。




 殺すのではなく、生かすことを考えるのなんて。




 滑稽かもしれません。醜くはしたないかもしれません。



 けれど。




 そんなわたくしでも、この子達を育てるという権利が___欲しいのです。



  神様、わたくしは貴方が嫌いでした。



 けれど、わたくしは都合のいい女なので、撤回します。



 あなたを好きになりましょう。あなたを拝みましょう。頭を垂れましょう。言うことを全て聞きましょう。



 ですから、どうか、どうか愛する御方との子達を無事産ませてくださいまし____


 


 「っ、く……………」


 アミィールは切にそう願いながら、力んだ。








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