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『運命を変えた証』

 




 「アミィ、大丈夫かい?」



 「ええ。大丈夫ですわ」



 アトランティスから帰ってきて、すぐにアミィール様の元に来た。アミィール様は昨日のこともあって1日休みで、自室のベッドで子供達に本を読んでいた。青とピンクの光を纏ったぬいぐるみ達に囲まれているアミィール様は、やっぱり聖母のようだ。



 見蕩れていると、アミィール様が心配そうに俺を見ていた。


 「お母様に、なにかされましたか?


 目が真っ赤ですよ?」



 「ああ、いや、これは…………」




 ……………アルティア皇妃様は、自分が父親を殺した事をアミィール様に伝えていない。泣くほど悲しんでいるのに娘にそれを見せなかったのは、余程知られたくないことなのだろう。



 なんというか…………親の鏡だな、と思った。

 アルティア皇妃様とラフェエル皇帝様、そして各国の重要人達の旅を隠すのは、後世にこれを残したくない為で。それほど辛い現実だったんだ。



 じゃないと、泣くほど好きな父親を殺すなんてことはしなかっただろう。…………この平和な世界を作る為に、全員がその犠牲になった。



 …………犠牲、という言葉は使ってはならないな。

 あの人達は龍神を、その『死の螺旋』を食い止めたくて動いたんだ。そして、それに誇ることなく、何事もなかったかのように平和を彩ることを選んだ。



 そして。




 アミィール様の幸せを全員が願っている。『運命を変えた証』…………口々に言っていたこの言葉。最初はわからなかったけれど、今ならわかる。



 沢山の悲しみから、沢山の苦労を乗り越えて………アミィール様が生まれた。それを考えると、旅をしていた全員がアミィール様を愛するのは当然だと思う。俺とは違う素敵な感情を抱くのだろう。


 それだけ___アミィール様という存在は、大切で、かけがえのないものなのだ。



 _____俺は、その期待を裏切ってはならない。

 勿論、好きだからこそ一緒に居るけれど、その奇跡の存在を守ることも俺の使命なんだ。


 そして。


 その希望が産む子供も、その悲しみの上に立った『運命を変えた証』となり、大きくなっていく。



 _____俺一人の幸せの上になりたっている存在じゃ、ないんだ。



 それを俺は噛み締めて、この人のそばにいよう。



 「…………セオ様?」



 そんなことを考えるセオドアにアミィールは再び声をかけた。セオドアはは、と我に返り、アミィールと子供たちに歩み寄る。



 そして、優しい笑顔を浮かべた。



 「____アミィ、俺、…………何度も言うよ。


 アミィに出会えて___よかった」



 「…………ふふ、セオ様はいつも、わたくしを喜ばせることを仰ってくださいますね。


 それは、わたくしも一緒です。



 ___わたくしと出会ってくださり、ありがとうございます」




 セオドアとアミィールは、唇を交わす。




 _____沢山の事柄が複雑に絡み合い、乗り越えた証であるアミィール様を俺が幸せにする。


 _____お腹の子供達も、アミィール様も幸せになって、俺達を支えてくれている沢山の人の悲しみさえも無くなるほどに。



 そして。



 この出来すぎた運命を____もっともっと素晴らしい物だと証明してみせる。




 そう思いながら、何度も何度も唇を交わした。ぬいぐるみ達はそれを見て、自分達も同じようにキスをしていて。


 それに気づいた2人は顔を赤らめながらも、笑ったのだった。








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