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呪われた眠り姫と愛深き天使

 



 「わっ」

 


 アルティア皇妃様とラフェエル皇帝様の幼い頃のたくさんの記憶の残像を見ながら奥へ奥へ進むと大きな扉があるところに来た。



 扉の前まで来ると___扉が勝手に動いた。天井がないゴツゴツした岩場、大きな裂け目の先。



 そこに____月明かりに照らされた黒いベッドに、愛おしい御方の姿を見た。それを見た瞬間、俺はラフェエル皇帝様を押しのけ無我夢中で魔法を唱えていた。




 「浮遊魔法・フライッ!」



 セオドアがそう叫ぶと大きな白い翼が生える。羽が抜けているなどお構い無しに飛び、寝ているアミィールの元へ降り立った。美しい眠り姫に天使が舞い降りる…………月明かりもあって、それはとても幻想的だった。



 けれど、そんな天使には余裕がなかった。




 「アミィ…………っ!」



 セオドアは寝ているアミィールの頬に触れる。顔が若干煤けている。髪の毛も焦げている。それら全てがセオドアを怒らせた。



 「こんな酷い事っ………アルティア皇妃様!隠れてないで出てきてください!」



 「隠れてなんてないわよ」



 そう、凛とした声が響いた。アミィール様の少し冷たい凛とした声とは違う、力強い凛とした声。俺はすぐさま声のした方を向くと____黒いドレスを身にまとった愛おしい御方に似ているアルティア皇妃様のお姿があった。



 アルティア皇妃様は『被害妄想もいいところよ』なんて言ってからアミィール様のベッドに近づく。



 「____アミィールが半人間で、『呪い』を継承した。龍神じゃない貴方は分からないかもしれないけれど、未熟な精神状態じゃ心が壊れて子供達が死ぬまで暴れ回る可能性さえあったのよ?


 それを止めてあげたんだから、感謝しなさい」




 「ッ、子供達は!アミィール様は!無事なのですか!」



 「無事じゃなかったら私はこんなに落ち着いてられないわよ。ねえ、ドゥルグレ」



 アルティアが空中に向かって声をかけた。視線を追ってみると___乙女ゲーム『理想郷の王冠』の攻略対象キャラであり俺と契約した太陽神・ドゥルグレがふよふよと浮いていた。眠そうな声で答えた。



『本当だよ、多分これ死んでたら俺ァこのクソ女に八つ当たりされて殺されてただろうよ。………セオドアの子だと言うから無償で見てやった。


 2人とも元気だよ、煌々と魂を燃やしている』




 「…………ッ、アミィール様は……?」



『娘の方も大丈夫だ。クソ女が腹を攻撃せず上半身だけを攻めたから気を失ってるだけだ』



 「…………………っ、………」




 セオドアはそれを聞いてその場に膝をついて泣いた。………よかった、本当に、よかった…………!



 何度も心の中で『神様ありがとう』と叫んだ。それぐらい、安心したんだ。


 泣いているセオドアを他所に、ラフェエルは静かに聞く。



 「やはり、『呪い』の継承か………」



 「……………うん。血も薄まったはずなんだけどね、龍神の血は完全に断ち切れなかったみたい。まあ、当然よね。私の子供ですもの、アミィールは」



 「ッ、ラフェエル皇帝様、アルティア皇妃様、その『呪い』はッ、どうにかならないのですか!?」



 「ならないわね」



 アミィールの傍まで来たアルティアは冷たくそう言った。母親だと言うのに何故そんなに冷静で居られるのか分からない。自分の娘が苦しんでいるんだぞ。………俺の子供たちも、苦しんでいるんだぞ…………!




 涙を流しながら視線で訴えるセオドアに、アルティアははあ、と溜息をついた。



 「そんなに睨んだってだめよ。私達龍神の血を持つ者が生きるということは、そういう事なのだから。


 アンタ、聞いたんでしょうラフェエルから。………この呪いをかけたのは、サクリファイス大帝国の人間達。


 今もその人間達はワールドエンドで呪いを放っている」














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