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紅銀龍と黒龍

 



 「……………!」




 アミィールが急に自分の身体を抱き締めた所で、黒い光を纏った。禍々しい光に、先程まで晴れていた空が黒ずんで_____アミィール様は後ろに飛んだ。




 そして。




『グァァァアッ!』




 _____アミィール様は突然、紅銀の龍になった。

 俺は、動けなかった。突然過ぎて足が言うことを聞かない。



 けれど。



 アミィール様はいつもの地下で行う龍化と明らかに違っていた。いつもの綺麗な黄金色の瞳が濁っている。そして、苦しむように天に向かって叫んでいる。



 そんなの見て____止まれるか!




 「ッ、アミィ!」



 セオドアは急いで駆け寄る。けれども、龍のアミィールには見えてないらしく、忙しなく尾を動かしている。禍々しい黒い光はアミィール様を囲んで苦しめるように、まとわりついている。




 「アミィ、アミィ!…………っわ!」




 不意に尾が俺の頭上に振り上げられた。俺は間一髪で後ろに飛んでそれを躱す。アミィール様は俺にこんなことをしない。___我を失っている…………?




『グルァアッ…………!』




 アミィール様は庭園でのたうち回る。花壇や草木が潰されていく。そんなのはどうでもいい。あとから作り直せる。今はアミィール様をお止めしなければ…………!



 でも、どうする?どうすれば止められる?魔法かダーインスレイヴを………いや、ダメだ!アミィール様を傷つけることはできない、子供達だっている。




 どうすれば……………!



 無力な俺は変わり果てたアミィール様を見てその場で泣くことしか出来ない。夫として失格だ。



 誰か、助けてくれ。



 誰でもいいからアミィール様を元に戻してくれ。


 優しいアミィール様を…………!




 セオドアの頭上に再び尾が振り下ろされる。けれども、セオドアは泣いていて動けない。直撃する………………その時。



 「よっ、と」



 「わあっ!」



 セオドアの身体が引っ張られた。危機一髪、セオドアは無傷だ。泣いているセオドアが顔を上げると____アミィールによく似た黒の長髪、黄金色の瞳のアルティア=ワールド=サクリファイスの姿があった。




 「あ、ルティア、皇妃、様………ッ、アルティア皇妃様!アミィが、アミィが!」


 「だーもーうっさい!分かっているわよ!ちょっと黙っていなさい!ったく、人がせっかく昼寝と洒落こんでいたっつーのに!寝起き超最悪よ!」




 「ッ!」


 アルティアはそうぷんすか怒りながら片手ひとつで自分より大きいセオドアをぽい、と効果音がつくほど軽々と後ろに投げた。そして、欠伸をしながら片手を前に出す。




 「___特殊魔法・黒縄(ブラック・ロープ)




 「___!」




 アルティアがそう言うと、アミィールの首や尾を黒い魔力の縄が縛り上げた。ぴたり、と動きは止まるが___それでも、アミィールが止まることはなかった。



『邪魔!』



 「アミィ!」



 黒い縄はパァン!と大きな音を立てて弾けた。セオドアは涙を流しながら駆け寄ろうとするのを、アルティアは手で制した。そして、もう片手の指をパキパキと鳴らした。



 「へえ、この魔法で止められないのか………こりゃ、面白いことするじゃない。



 とはいえ___このままじゃ、サクリファイス大帝国は潰れるわね。孫達も心配だし…………実力行使で止めようかしら」



 「アルティア皇妃____!?」




 セオドアが呼ぼうとする前に、アルティアの服は破けた。黒い光を纏いどんどん大きくなって____アミィールよりも大きな、黒い龍になった。








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