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幸せが壊れる音がした

 


 「寒くないかい?」



 肌寒い庭園にて、群青色の短髪、緑色の瞳のセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスは心配げにそう聞いた。


 彼はギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公に転生したにも関わらず攻略対象キャラと結婚せず、サクリファイス大帝国の皇女と結婚した乙女男子だ。



 「ええ、大丈夫ですわ、セオ様」




 そう答えたのがサクリファイス大帝国皇女であり、セオドアと結婚した紅銀の長髪、黄金色の瞳を持つアミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。彼女のお腹は大きく膨らんでいる。既に妊娠9ヶ月を迎えているのだ。



 ___月日が経つのはとても早い。

 ふわりと微笑むアミィール様を心配しつつ思う。執務や教育に明け暮れ、その都度アミィール様と活発なお腹の子供達と共に過ごしていたらあっという間に臨月だ。楽しくて幸せな日々というのは時間を忘れさせてくれる。気づいたら俺達は20歳になるのだから、侮れない。



 でも、全然嫌な気分ではない。

 寧ろ家族がもうすぐ増えるのだとワクワクしている。16歳の俺ではきっとこの未来を描けなかっただろう。20歳になる俺はとてつもなく幸せだぞ、16歳の俺。




 「…………ふふ」



 「?どうしたんだい?」



 不意にアミィール様が笑った。なぜ笑われたのか分からなくて首を傾げながら尋ねた。アミィール様は目を細めながら幸せそうに口を開いた。



 「子供達が、『パパまた変なこと考えている』って言ってますわ」



 「____ッ」



 20歳になるからとはいえ俺は未だに産まれていない子供達にもこうして言われるんだぞ?本当に俺大人になれるんだよな?子供達の方が年上のような気がしてきた。俺本当は子供なのか………?



 そんな馬鹿みたいな事を考え、顔を赤らめるセオドアの頬をアミィールは優しく撫でる。




 「セオ様は子供達に愛されてますね。最近すごくセオ様の真似をするのです。


 ピンクの光を放つ子はいつも青い光の子に泣かされていますわ、泣き虫さんです」



 「うう………ピンク色の子……お願いだから俺の悪いところに似ないでおくれ」



 セオドアは顔を赤くしながらアミィールの大きなお腹を撫でる。

 …………この通り、俺達はお腹の子達の違いさえわかるようになった。青い光の子はとても活発で、好奇心旺盛で新しいものを見ると動かしたりアミィール様を通して『なにこれ?』と聞いてくる。


 ピンクの光の子は少し内向的で新しいものを見るとぬいぐるみを使って俺やアミィール様の後ろに隠れる素振りを見せる。しかし優しい子で俺が青い光の子に剣で殴られたりするとやっぱりぬいぐるみを操って俺の頭を撫でてくれる。




 ……………まだ会ったことがないのにこんなにも愛らしい事をする子供達だと知るともう言葉に出来ないくらい浮かれてしまう。そりゃあ産まれるまで分からないのも充分魅力的だとは思うけれど、気持ちの起伏を可視化出来るのは言葉が聞こえない俺でも嬉しい。




 「____アミィ、やっぱり俺、幸せだ」



 「____わたくしもです、セオ様」




 2人は庭園を見渡せるベンチで身を寄せ合う。まだ春になりたてで寒いのに、2人でくっついていると温かいんだ。…………とはいえ、何時産まれてもおかしくないくらいお腹が大きい。ずっと外に居るのは体に良くないだろう。




 「アミィ、そろそろ城内に戻ろう」



 「ええ。___次は子供達が産まれて、セオ様の育てた花が咲き乱れている時に、こうしてデートしましょう」




 「ああ。喜んで。…………御手を」



 セオドアは優しく笑みを称えて立ち上がり、アミィールに手を差し出す。アミィールもそれを笑顔で_____




 「…………ッ!?」




 そこで、アミィールの顔が歪んだ。

 苦しい………!なに、これ………お腹、痛い……………!ゾクゾクとした感覚が全身を襲う。何かが纒わり付くような不快感も覚える。



 「………アミィ?」




 セオドア様が、心配している。

 けれど、口を開けない。『代償』とは違う違和感。____もしかして!




 「セオ様!………ッ、逃げて!」




 「ッ、アミィ!」




 そこまで考えたところでアミィールはすぐさま飛んで、セオドアから距離を取った。それと同時に服が破けていく。



 これは_____『呪い』だ。



 そう気づいた頃には、わたくしの意識は途切れた。












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