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その涙は塩っぱい

 







 セオドア様は、泣いた。




 あんなに酷い目に合ったのに、殺すなと緑の瞳から涙を零して、声を荒らげて泣いたのだ。




 わたくしは殺す気しかなかった。



 こんな異空間に愛する人を閉じ込められ、沢山の男と女がわたくしの大切な婚約者を傷つけようとしたのですよ?



 現に、セオドア様はボロボロだった。頬や首に切り傷があり、赤い跡が胸元にちらほらと付いている。服も殆ど脱がされている。



 わたくしがあのわからず屋な父親と話などしていたせいで。今考えても腹立たしい。




 でも。




 それでもセオドア様は殺すなと言うのだ。…………とても慈悲深い御方だとは常日頃から知っていたけれど、ここまでとは思っていなくて正直戸惑った。




 殺してやりたい。けど。殺したら…………





『殺したら多分、この男に軽蔑されるな、お前』




 わたくしの手に持つ剣_母親の魔剣であり、わたくしの剣でもあるダーインスレイヴ_が脳に直接そう告げた。




 ………………やはり、そうでしょうか。




『ああ。当たり前だろう?泣きながら、アミィール様には人殺しをして欲しくない、人を殺すアミィール様を見たくない、と心まで泣いてる』




 ダーインスレイヴもエンダーと同じように心を読むことが出来る。そんな魔剣が言うのだから本当だろう。




 許す気は毛頭ないけど_____こんなことで、セオドア様に嫌われるのは嫌だった。





 「_____わかりました、セオドア様。殺さないので、もう泣くのはおやめ下さいまし」




 「ッ…………」




 アミィールはそう言って青紫の剣を投げ出して、優しくセオドアを抱き締めた。そして、背伸びをしながらセオドアの瞳から流れる涙を舐めとる。




 そうしただけで顔を真っ赤にするセオドア。




 残念、涙、引っ込んじゃった。

 全部舐めとりたかったのに。……………さっきの催淫状態のセオドア様はとても愛らしく可愛かったけれど、この女子のように恥じらうお顔も大好き。




 とはいえ_____こんな酷い目に合わせた者達をただで許す事は勿論しない。




 「____レイヴ」





 わたくしがそう呼ぶと、ダーインスレイヴが人の姿で現れる。



 青紫の長髪、黒い瞳、黒いコートのような着物を纏った男が突然現れてセオドアは目を見開く。



 そんなセオドアをよそにダーインスレイヴはさも面倒だと言わんばかりの声色で言った。



 「はぁ………………なんだい?我儘皇女サマ」




 「至急、エリアス女王陛下にこの者達の監禁を手配して。貴方は生粋のストーカーなのだから、事情はわかりますよね?」




 「酷い言われようだな、流石ラフェエルとアルティアの子だ」




 「返事は?」




 「……わかったよ。聞くよ、だから機嫌を治しておくれ。お前の婚約者がまた泣きそうだぞ」




 「な、泣きません……貴方は誰ですか……?」



 セオドアは怯えながらもたどたどしく聞く。ダーインスレイヴはぽりぽりと頭をかきながらやっぱり面倒くさそうにいった。




 「あー、お前がサクリファイス大帝国に来たら改めて挨拶するよ。


 それより服をどうにかしろ。俺は男の裸に興味が無いんだ」




 「そうね。傷の手当もございますし、共に卒業パーティをエスケープしちゃいましょう」




 「あ、え…………でも、閉じ込められてて………出られません」



 「それはご心配なく。……………解除魔法・中」




 「………!」





 アミィールがそう言っただけで黒い空間に亀裂が入り、パリン!と音を立てて割れた。




 セオドア達は____自分達の教室に居た。






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