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それはとても不快な気持ち

 



 「えっと、身体にいいものは…………」




 現在、セオドアは『紅茶室』にいた。

『紅茶室』というのは、俺が紅茶が好きだと知っている俺の妻のアミィール様が誕生日プレゼントに、と作ってくれた国内外関係無しに仕入れた様々な種類の紅茶の葉や紅茶に合わせた様々なティーカップ、ティーポットなど、紅茶に関するものが置いてある倉庫のような場所だ。俺のお気に入りの部屋である。


 しかし、紅茶好きな俺は皆にも紅茶を飲んで欲しくて家族はもちろん従者達も入れるように開放している。もう皆が利用する場所と化している。


 それはともかく、今俺は『妊婦でも飲める紅茶』を探していた。アミィール様と子供達のことを考えると身体には良くないだろうが、水しか飲んでいないアミィール様にたまには紅茶でも飲んで欲しいんだ。あわよくば笑顔も見たい。癒されたいし愛でたい。



 そこまで考えて、セオドアは小さく笑った。


 …………なんて、共に居て3年も経つというのに、相変わらず俺の頭の中はアミィール様のことばかりだ。子供達のことももちろん考えるけど、俺の愛する女はアミィール様ただおひとりなんだ。この愛が増すことはあれど減ることなどないと断言出来る。いや、増減なんて表現ではない。『居なければ落ち着かない』、『居てくれなければいけない』………そんな存在なのだ。




 身体の一部なのだ。いっそ俺の膵臓になってほしい。……いや、それはだめだ、キスもそれ以上もできないし、笑顔だって見れなくなる。



 「………って、流石に気持ち悪いかな、俺」



 セオドアはそう言いつつも、その顔は穏やかである。上機嫌で紅茶を物色___「セオドア様」



 「…………?」




 不意に、声をかけられた。見ると、見ない顔の侍女。顔を赤らめて俺を見ていた。…………新しい侍女かな?



 「なんですか?」



 「あの、…………セオドア様、わたくし………」



 そう言ってもじもじとする侍女。よく分からないな。俺の言い方が不味かったかな?



 「申し訳ございません、私が何かしましたか?」



 「そうではなく、………アミィール様は今妊娠しているのですよね?」



 「そうですが………」



 「では、………営みも出来なくて欲求不満ではないですか?」



 「え」



 営み、という言葉に持っていた紅茶を落とした。何を言っているんだこの侍女は?目を潤ませているが、この視線は知っている。



 マフィンやロヴェン達___ギャルゲー『理想郷の宝石』の攻略対象キャラが自分に向けてきたような熱の篭った視線。それを見て、鈍い俺でも悟った。



 もしかして…………誘っているのか?

 そう考えると、鳥肌が立った。不快感である。俺はすっかりアミィール様の虜になり、ほかの女性から向けられるこの視線が嫌いになっていた。



 「わたくし、結婚の儀でお姿を拝見してから………ずっとセオドア様に………妾でもなんでもいいです。アミィール様が御子が生まれるまで、わたくしと………その、その為に貴族でありながらサクリファイス皇城で働いていて………」




 「……………」




 不快感は増す一方だ。結婚の儀を見たのなら尚更だ。俺はアミィール様以外の女性に触れるどころか目を合わせるのも嫌だと言うのに。これだから主人公というのは嫌なのだ。



 それに、俺を欲求不満だと言うけれど、アミィール様はお優しいから身重な身体でも俺を愛してくれる。流石に営みを毎日している訳では無いが、口でしてくれたり、………仮に欲求不満だとしても、アミィール様以外にそういうことをして欲しくない。しないと決めている。



 「…………私は皇配です。アミィール様以外の方とそのようなことは致しません」



 自分だと思えないくらい冷たい声が出た。こういう女性が苦手だし、ここで働いておきながらそんなことも理解出来ていない女性にもちろんいい気持ちはもたない。



 けれども、侍女はしつこかった。

 目を見開いて詰め寄ってきた。






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