すくすくと育つ幸せ達
「昔昔ある所に、おじいさんとおばあさんが……………」
絵本を読み上げているのは 群青色の短髪、緑色の瞳のセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスである。
彼はギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公に転生したが、攻略対象とは結婚せず、サクリファイス大帝国の皇女に見初められ結婚、そして現在妻のお腹にいる2人の子供達に絵本を読み聞かせているのだ。
「セオ様、子供達が『おじいさんとおばあさんってなに?』と聞いております」
そう言って穏やかな笑みを浮かべているのは紅銀の長髪、黄金色の瞳を称えたサクリファイス大帝国皇女でありセオドアの妻である、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスである。現在2人の子供達を妊娠している。
セオドアはアミィールの言葉を聞いて『なんて言えばいいのだろう』と困ったように笑ってから、言葉を紡いだ。
「君達で言えばラフェエル皇帝様とアルティア皇妃様だよ、他にも、私の親がそれにあたるね」
「セオ様のご両親はともかくあの夫婦は認めたくはありませんけれど。
……あ、『パパとママのパパとママなんだね』と言っていますわ」
「アミィ…………笑顔でそういうことを言ってはならないよ………
そうだよ、賢いね」
セオドアはそう言って少し膨らんでいるお腹を撫でた。
………アミィール様が妊娠して5ヶ月が経った。俺は聞こえないけれどアミィール様には話しかけているらしい。原理はやっぱりわからないけれど、サクリファイス大帝国皇妃であり俺の義母、アルティア=ワールド=サクリファイス様は『アミィールもそうだったわ』なんて言っていた。
とにかく、俺達は幸せ真っ只中である。
子供達が産まれて成長してから『パパ』と呼ばれたい気持ちは少なからずあったけれど、これはこれで全然ありだ。できれば直接話したい。そして愛でたい。
俺も聞こえるようにならないかな………
「ふふ、………セオ様、この子達が産まれたら沢山お話できますわ」
「ッ…………う、うん」
少し凹んでいたセオドアはアミィールの的確なフォローにセオドアはかあ、と顔を赤らめた。
……やはり俺の妻は俺の心を読めるんだ……というか、俺はそんなに分かりやすいのか?うう……ポーカーフェイスとは……?
そんなことを思っているとピンクの光が以前アミィール様にあげたクマのぬいぐるみに宿り、くるくると踊り出した。どうやら絵本は飽きたらしい。
こんな風に日常的に超常現象が起こるこの生活にも慣れてきた。最初こそ怯えていたけれど、今では可愛い遊戯である。見ているだけでほっ、とする。
「アミィ、ピンクの光の子は女の子なのかもしれないね。あのぬいぐるみを置いておくといつも遊んでいる」
「ええ、そのようですね。青い光の子はしょっちゅうセオ様の真似をして『俺』と言うので、男の子なのかもしれません」
アミィールとセオドアはそう言い合って、顔を合わせて笑う。
どんな性別でもいいし、なんなら産まれるまでわからない方がいいとは思うけれどもこうして自然と予測してしまう。それだけ楽しみなのだ。
それはともかく、アミィール様と俺の考えが正しければ、2人の子供は男の子と女の子ということになる。それがもう嬉しい。男の子と女の子一人一人産まれるなんて乙女的にはグッジョブである。テンションも上がるというものだ。
女の子とは一緒に縫い物や刺繍、お菓子作りなんかもできちゃう。
男の子とは一緒にキャッチボールやチャンバラごっこなんてこともできちゃう。
しかもどちらも愛おしいアミィール様の御子だぞ?可愛いに決まっている。これは絶対だ。
「あたっ」
「セオ様!?」
一人うんうん、と頷いていると頭を何かで殴られた。見ると___青い光に包まれた玩具の剣が浮いていた。おそらく男の子の方だろう。心配してくれたアミィール様がお腹を抑える。
「だめですよ、暴力は。…………セオ様、どうやら青い光の子が『続きを早く読んでほしい』と仰っています」
「そ、そうか、ごめんね」
青い光の子_先程思った男の子の方_はどうやら口より手が出るタイプらしい。可愛らしいのは可愛らしいのだが、これは産まれてからちゃんと改めて『だめだよ』って教えなきゃいけないな…………
そんなことを思いながら再び本を読み上げたセオドアだった。
※作者から読者様へ
無事、20章まで来ました。
ここまで見てくださってありがとうございます。
ご覧の通り章を重ねているというのに終わる気配がまるでありません。
書きたい所がまだ沢山あり、物語としては中盤に来ていれば嬉しいな、とほわほわと考える程度には迷走しています。
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少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますので、ご愛読のほどよろしくお願い致します。




