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サプライズイベント!

 





 リンドブルム孤児院。

 様々な虐待を受けてきた500人の孤児達が勉強をし、遊びをし、生活するドーム状の孤児院である。俺が恐れ多くも"未来を育てるお手伝い"をしている場所だ。



 いつもなら来ただけで子供達が『セオお兄ちゃん』なんて言って駆け寄ってくるんだが、今日は違った。




 「……………?」




 子供達が1人も出てこないのだ。なんだか異様な………閑散とした空気が寂しい。首をかしげつつ、アルティア皇妃様を見る。



 「あの、子供達は………?」



 「……………何かあったかもしれないわね、広間に気配がするわ。すごく嫌な気配」



 「…………!」




 セオドアはそれを聞くなり孤児院の中に向かって走った。


 子供達に何かあった!?そんなの黙っていられない!


 アルティア皇妃様は、ドライな御方だ。誰かを助けたりするのを『面倒くさい』と片付けるお人柄である。それはご自身が強すぎ、助ける事をすると相手をどんなに手加減しても殺してしまうから人間の事柄に首は突っ込まない、とラフェエル皇帝様が言っていたのを思い出す。




 つまり、つまりだ。




 ____俺が、助けるしかない。



 ____此処は俺の大切な場所なんだ。



 ____アルティア皇妃様が動かないなら、俺が!




 セオドアは広間に向かって走る。

 もう広間は目の前だ。太陽の日差しがはいっている。



 みんな、無事で居てくれ____「「「「セオお兄ちゃんおめでとーーーーーー!」」」」」…………!?



 広間に出た瞬間、パァン、と大きな音と共に紙吹雪が舞う。そして、眼前には____クラッカーのようなものを持った、子供達500人が所狭しと敷き詰められていた。




 「な、…………にが…………?っわ!」




 子供達が俺に向かって走ってきた。そして、口々に言う。




 「セオお兄ちゃんおめでとー!」



 「セオお兄ちゃんばんざーい!」



 「がんばったね!セオお兄ちゃんー!」



 「しあわせ!?しあわせ!?」



 「さぷらいずせーこー!」



 「やったー!」



 「すごくおどろいてる~!」


 「あ、えっと、…………?」




 子供達が全員笑顔で何故か俺を祝ってくれていて、戸惑う。これは何事なんだ………?




 そんな俺の戸惑いに答えたのは___後ろから聞こえる、アルティア皇妃様の声だった。




 「_____子供達がね、言い出したことなのよ」



 「…………アルティア皇妃様?」



 アルティア皇妃様はカツ、カツと靴を鳴らしながらゆっくり俺を追い越す。



 「貴方に子供が出来た、だからあまり来れなくなるかもしれないって私、この子達にポロッと言っちゃってね。


 そしたら、『お祝いしたい!』って皆が言い出したの。


 だから私もお手伝いした。けれど、私のしたことはこのクラッカーの作り方を教えたことと、あなたを連れてきただけ。



 _____セオくん、改めて、お父さんおめでとう」




 「「「「「おめでとーーーーっ!」」」」」





 アルティア皇妃様の言葉に、子供達は今一度大声で、笑顔でそういった。

 止まってしまった俺の思考が動き出す。そうしたらさ、勝手に涙が出てきて…………胸がじんわり、温かくなって。




 「っ、う…………!」




 「セオお兄ちゃんないてるー?」



 「かなしいー?」



 「あたしたち、しっぱい?」




 不安な声。___だめだ、俺。今は泣くな。子供達が不安になるだろ。でも。じゃあ、この込み上げてくる涙をどうすればいい?どうすればいいんだ?



 セオドアは何度も自分にそう問うて、顔をあげた。クシャクシャの、未だに涙が零れている顔で、満面の笑みを浮かべた。


 「皆______涙っていうのはね、嬉しくても出るんだ。


 俺は、嬉しくて、泣いてるんだ。


 _____ありがとう、みんな、大好きだ」




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