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主人公は不機嫌

 





 「…………………」




 セオドアは馬車の中でむすり、と不機嫌な顔をしていた。目の前に座るアルティアは頬杖をつきながら笑顔だ。



 「機嫌直してよ~、貴方の執務でしょうに」



 「………今日、私はアミィール様と一緒に休みを取りたいと言ったはずですが?」



 セオドアは不機嫌な声でそういう。

 …………そうなのだ。今日はアミィール様と2人で居ようと決めていた。1度アミィール様にご飯を食べさせてから子供達が活発になった。魔法で物を動かし、剣で遊んだり、アミィール様と肩を並べて絵本を読むときは2人とも青とピンクの光を纏ったぬいぐるみで聞く。今日はピアノを共に弾いてあげようと思ってたのだ。






 そんな家族団らんの時間を心待ちにしていたら、ラフェエル皇帝様はアミィール様に早急に書類を片付けろ、とそして俺はアルティア皇妃様に『孤児院に行くよー!』と引っ張られ連れてこられた。



 リンドブルム孤児院が嫌いな訳では無い。子供達も好きだ。けれど、突然すぎるのだ。お菓子すら準備してない。そして何度も言うが家族団らんの日だった。



 それを滅茶苦茶にされたのはどうしても許せなかった。




 「私は……………アミィール様、子供達と遊ぶ為に頑張って仕事をして、教育も受けて…………やっと、やっと1日の休みを得たのになんでそう唐突に…………」




 「あー、本当に細かいことを気にする男ね~、金玉ついてんの?」



 「ついてなかったら子供はできません」



 怒りや不満で普段無視する下ネタにも食らいつく。よっぽど怒っていることは容易にわかった。



 けれど。




 「上司の命令は絶対でしょ~?あんた前世で何を学んできたのよ」



 「…………ここはギャルゲー『理想郷の宝石』と乙女ゲーム『理想郷の王冠』の世界なんでそんなこと忘れました」



 「ふーん?じゃあアミィールと出会ったのはゲームの設定なんだ?」



 「そんなわけ………っ!」




 ムカッ、と来て立ち上がって反論しようとしたら馬車の天井に頭をぶつけた。痛い。アルティア皇妃様はがはは、と指をさして笑う。ものすごく意地悪で大人気ない。本当にあの優しいアミィール様の母親なのか疑問である。




 「は~面白い、前世は芸人かしら?さぞ売れたでしょうね~」



 「私は芸人じゃありません!」


 「はいはい、わかったわかった。


 けどね、今日の訪問は欠かせないイベントなのよね~」






 アルティア皇妃様はそう言って目を細めた。…………いつもの意地悪な顔ではなく、優しい顔。さっきはアミィール様の母親だと思えない、なんて思ったけど、こうしてみると顔も相まってアミィール様に見えなくもない。違いは紅銀の髪か黒髪かどうかしかない。




 それよりも。




 「………イベントってなんですか?」



 「おっと」




 そう突っ込むと、アルティア皇妃様は自分の口を手で塞いだ。…………この人は隠し事が下手だ。どうせろくなものじゃないだろう。



 「…………面倒事は勘弁ですよ」



 「すっかり疑り深くなっちゃってまあ、誰のせいかしら?3年前来た当初は私に見蕩れてたくせに」



 「あの時は気の迷いでした」



 「え?まじで見蕩れてたの?」


 「ッ…………そんな昔のことは忘れましたッ!」




 セオドアはぷい、と顔を背ける。

 それを見たアルティアはけらけらとまた笑った。



 「今日は号泣するわよ、貴方」



 「な、泣きません!絶対!泣きません!」



 今日は絶対この人に泣かされないし何があっても泣かないぞ…………!



 そう固く決意した。














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