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ヒーローは遅れて現れる

 



 ザッシュは言葉を重ねる。




 「あの御方は……………あれだけの器量を、キャラ性を持っていながらモブだった……!それでも諦めず声をかけたというのにあの御方………いや、あの女は拒んだ!そして、お前を選んだんだ!



 腹立たしかったよ……………だが、それも今日で終わる」





 ザッシュはそこで言葉を切って、顔をあげた。悪役とはいえ主要キャラ、整った顔をしているのだが___その顔は、醜く歪んでいた。




 「お前に死にたくなるような恥辱を味わせた上で、殺す。そして悲しみに暮れるアミィールを励まし、心の隙間に入り込み___俺の女にする」



 「ふざ………けるな…………!」




 セオドアは涙目になりながらも睨む。

 こんなことが許されてたまるか。異世界転生者以前に人としておかしい。狂っている。




 「同じ異世界転生者ならわかるだろう?隠しキャラは攻略したくなる…………それにあの美しさだ。乱れた姿を想像するだけでソソる。



 あ、抗っても無駄だぜ?攻略対象キャラは全員俺が攻略した。全員俺の奴隷だよ」





 ……………とんでもない奴である。いくらキャラとはいえ、周りにその攻略対象者がいると言うのにこんなことを抜かすのだから。それでも、攻略対象者達は恍惚な顔を浮かべているだけでそれには触れず話す。





 「セオドア…………乱れた貴方を早く見たいわ」



 「私、男達が襲ってから抱かれたいわ」




 「私は男に抱かれている時にシてもらうわ♪」



 「もう!1番はわたくしですからね!」




 ……………狂ってる。



 このゲームは狂っている。





 朦朧とする頭でそう思う。

 このゲームはエロゲではなくギャルゲーだ。大好きなギャルゲーだった。でも…………どこまで、幻滅させれば気が済むのだろう。



 男達は抵抗出来ない俺の服を脱がし始めた。抵抗しようにも身体に力が入らないんだ。…………このまま、好き放題されてしまうのか?




 いやだ。




 嫌だ。



 イヤだ。




 「い、や…………だ!」



 「抵抗しても無駄だぜ?兄ちゃん、男は初めてなんだろう?優しく抱いてやるよ」




 いやらしく笑う男。気持ち悪い。




 …………アミィール様。申し訳ございません。


 俺はどうやら、罰が当たったようです。




 あまりにも幸せだったから、罰が当たってしまったのです。



 貴方のことばかり考えて、自分の宿命を忘れていました。




 ですが、アミィール様。



 貴方と出会ったことが、貴方とお話出来たことが、貴方と幸せな時間を過ごせたことが、…………貴方を愛したことが、今世で1番嬉しく、幸せでした___




 「アミィール様、あいして、ま____!」




 そう呟いた時、目の前にいた男が消えた。否、消えたのではない。細い足が男を蹴っ飛ばしたのだ。大きな音を立てて、黒い壁に叩きつけられた。



 俺は、霞む目を擦って上を見上げた。



 そこには____今、1番会いたかった人。





 「…………………セオドア様」



 「アミィール、様…………!」




 紅銀の長髪が揺れている、純度の高い黄金色の瞳が光っている。…………朧気な頭で思い浮かべていた御方が、白いドレスを身に纏いその美しさを称えながら優しく微笑んでいた。





 「……………もう大丈夫、セオドア様。遅くなってごめんなさい」



 「ど、して……………ッ、だめで、す、今、私に近づいたら…………」




 「………………淫魔系の魔法ね。確かに、このままでは苦しいわ。今どうにか____「な、なんでここに貴方がいるのよ!」




 マフィンの甲高い声が空間に響いた。アミィール様は申し訳なさそうな顔をして、俺の頬に触れた。




 「……………重ねてごめんなさい。少しだけ我慢してて。




 ____すぐに終わらせるから」






 アミィール様の黄金色の瞳が、妖しく光った。







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