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子供達の戯れ

 



 セオドアの動いていた口が止まった。

 何故なら____アミィールが使っていたフォークが青い光を纏って動き出したから。



 「な、何が………!」



 セオドアの言葉を無視するように、くるくるとフォークが踊り、近くにあったテリーヌをぷすり、と刺して、宙に浮く。そして___



 「え、………っん!」



 フォークはアミィールの口に無理やり突っ込まれた。アミィール自身何が起きているのかわからなくて戸惑う。


 何が起きているのかさっぱりわからないセオドアはすぐさまアミィールの肩を掴んだ。




 「アミィ!大丈夫か!?」




 「大丈夫よ」



 セオドアの言葉に答えたのはアルティアだった。この不思議な光景が起きているのに皇帝夫婦は微動だにしていなくて、それがセオドアを怒らせた。




 「なんでそんなに呑気にしていられるのですかッ!誰かが魔法でアミィに………ッ!」



 「この魔法は多分、アミィの赤ちゃん達のものよ」



 「…………は?」



 セオドアはぽかん、と口を開ける。それを聞いてたアミィールも、テリーヌを頑張って咀嚼しながら目を見開いている。


 ラフェエルは静かに言った。




 「アルがアミィを孕んだ時もこういうことがあった。食べたがらないアルに腹の中のアミィが魔法を使って無理やり母親に飯を食べさせていたんだ」



 「そ、そんなこと……こ、子供が出来るわけ………!」



 「それができちゃうのよね~、この世界ってなんでもありな世界だから。


 けど、悪阻がひどい中これをやられると辛いわよね。私もアミィがやってるのを知らなかった時は驚いたし、気持ち悪くなったのよ。



 ………で、私が編み出した方法はこれ」




 アルティアはそう言って指を鳴らす。

 すると___机の上にぬいぐるみやガラガラ、玩具の剣が現れた。アルティアはアミィールに_正確にはアミィールのお腹に向かって_言った。




 「子供達~、いい子だからこれで遊んで~」



 「何を…………!?」




 セオドアは言葉を詰まらせた。アルティアの言葉に机に置いてあったぬいぐるみが淡いピンク色の光に包まれくるくると踊り始めたのだ。それだけではなく、玩具の剣が青い光を纏ってぬいぐるみを攻撃しているのだ。



 もはや何が起きているのかわからないアミィールとセオドアは言葉を無くす。それを見たラフェエルはふ、と笑みをこぼした。



 「懐かしいな、アミィも胎児だった時は剣やぬいぐるみが好きだった」



 「ね、あと本が好きだったし、セオくんもアミィも絵本でも広げてあげなさい。きっと透視でも読むわ」



 「………………」



 「………………」




 セオドアは勝手に動くぬいぐるみと剣を見ながら思った。


 

 _____子供達もチート持ち確定じゃないか………………



 すっかりおしゃぶりもガラガラもどうでもよくなり、その光景を見つつ冷めた食事にやっと手をつけたけれど、味は感じられなかった。





 * * *





『………………すう』



 「…………………」




 今日はアミィール様の龍化の日だ。子供が出来てから頻繁に龍化して眠るようになった。それはいい。いや、『代償』や『呪い』があることがいいとは言わないけど大事な身体だ、ゆっくり休んで欲しい。




 けれど。




 「………………」




 セオドアは真顔を作っていた。

 何故なら___空中に、青い光とピンクの光に包まれた絵本が浮いているからだ。それはもう押し付ける勢いで差し出されている。


 信じられないかもしれないが____アルティア皇妃様とラフェエル皇帝様の言うことが正しければこれをやっているのはアミィール様のお腹の子供達らしい。



 …………って。



 「信じられるか!」



 思わず大きな声で叫んで頭を抱えた。

 だって、だってまだ3ヶ月だぞ!?前世で保健の授業を受けた時を思い出したけれどまだまだ小さい、意識のない位の赤ちゃんが!絵本を読んで!と甘えてきているんだぞ!?



 そりゃ嬉しいさ!ちゃんと生きているんだって思えるさ!けれども!チートが過ぎないか!?超常現象すぎて頭がついて行かない!赤ちゃんがもう既に魔法を使える現実を受け止められない!




 …………本当に、俺の子だよな?

 俺が父親なんだよな?この平凡回復チートしか持っていない俺の子供なんだよな?龍神の血筋というのは人智を超えるのが絶対条件なのか?


 それとも、俺じゃない特別な力を持つイケメンの子供達かも………いや!そんなことはない!アミィール様は俺を1番に愛してくれている!兵士や執事にいやらしい目で見られてても気づきもしないアミィール様だぞ!?そんな純粋で一途なアミィール様の愛を疑うなんて愚かだ!


 だけど、俺の子達がこんなこと……あ、やばい、泣きたくなってきた………




 セオドアはそこまで考えてじわり、と涙を滲ませる。すると2つの絵本は床に落ち、代わりに近くに置いてあった2つのぬいぐるみが青い光とピンクの光を纏って動き出し___ぽん、と座るセオドアの膝に手を置いた。










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