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男でも女でもバッチコイ!

 








 「ふんふ~ん」




 「おい、セオドア」



 「なんだよ、仮眠はしたぞ」



 「それは知ってる。俺が聞きたいのは___これはなんだ、ということだ」




 サクリファイス皇城の執事会議を終え、戻ってきたレイはそう言って部屋を見渡す。そこには………沢山の小さな可愛らしいドレス達。その中心で小さな靴下を編んでいるセオドア。



 セオドアはさも当然だと言わんばかりに首をかしげながら言う。



 「勿論、子供達の服だが?今作っているのは手編みの靴下だ。これが終わったら手袋を作ろうと思っている」



 「………………」




 この状況を見て言葉を無くしてしまわない男はいると思うか?俺は言葉をなくした。馬鹿だろう?馬鹿すぎるだろう?そして器用過ぎるんだ。何度も言うがまだ3ヶ月だ、子供達の身体だって未だに出来上がっていないというのに0~5歳ぐらいの子供が使う服を山のように素早く作ってしまうんだぞ?こいつは皇配よりも職人になった方がいいのではないか?




 沢山の疑問が湯水のように溢れ出てくる。それだけこの乙女男子は異常である。呆れているレイを他所に、セオドアは鼻歌まじりに手を動かす。



 「やっぱり、アミィール様の御子なら、可愛い服を着るべきだよな。大人になってしまっては美しくなるのだろうから、小さい頃にはめいっぱい可愛い格好をさせてあげなければ。………アルティア皇妃様は前世の知識を使ってカメラなどは作ってくれないだろうか………


 あの御方のことだから、できないわけが無いのだろう。できなければ俺も前世を思い出して構造を考えるべきかな?どう思う?レイ」



 「いや、まあ………それよりも、だな」



 「?どうしたんだ?顔が青いぞ………ああっ!」




 「!?どうした!?」




 セオドアは突然大声を出した。レイは服を踏まぬようにつま先立ちで近寄る。セオドアは顔を真っ青にして震えながら言った。



 「…………男の子の可能性を忘れていた………」



 「…………はあ?」




 ぷるぷると震えながら涙目でそう訴える。今編んでいる靴下を机に置いて、ふらふらと立ち上がるとミシンの前に来て大声でレイに言う。




 「レイ!男の子というのはどんな服を好むのだ!?私の趣味では女々しいだろうか!?自信が無いから今流行りの男物の服を教えてくれ!布も今すぐ準備してくれ!頼む!」



 「……………はあ、セオドア。よくきけ、お前の子供達はまだ3ヶ月だぞ。こんなに作っておいてどうするんだ?


 作るにしても今すぐ作る必要などないだろう」



 「何を言っているんだ!万が一早く産まれたらどうする!?もしかしたら来月には生まれているかもしれないだろう!?」



 「お前は妊娠なめすぎだろ!普通に考えてその場合子供達は死んでるぞ!」



 「冗談でも死ぬなんて言うな!縁起でもない!


 子供達は男の子でも女の子でも俺が守るから生きるんだよ!」



 ぎゃん、と我を忘れて吠えるセオドア。脳内お花畑なのか?ピンク色に染まりすぎだろ。これがまだアミィール様がこうなっているのなら納得出来るが、夫であり皇配の男が言っているのだからあべこべなのだ。



 この様子だと子供達が産まれたら更に悪化するのだろう、そのうち玩具を作り始める未来まで容易に想像できる。こうして今のように『流行りはなんだ!』と俺に聞いてくる未来と同時にだ。




 「とにかく新しいことをする前に今散らかした服を片付けろ!やりっ放しするな!」



 「う、………か、片付けるのを手伝ってくれてもいいだろう?」



 「甘えるな。俺が片付けるなら全部ゴミ袋にいれる」



 「……………」




 そう脅してやると、しぶしぶと落としていた服を片付け始める。どっちが主人か分からないような光景が繰り広げられるのだった。











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