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強くなるんだ!俺!






 「はっ!」



 「ふぎゃあっ!」





 鍛錬場、セオドアは自分より一回りも二回りも大きな兵士を軽々と投げ飛ばした。それだけでは飽き足らず、木刀を持つ男には腰に差している木刀を抜き急所目掛けて放ったり、拳を握る兵士には拳で応戦し、まるでダンスを踊るような足取りでたくさんの兵士達をのしていく。




 この光景は鍛錬場ではわりと見られる光景なのだが、やられた兵士達は言う。



 「なあ、最近セオドア様鬼気迫る感じがしないか?」



 「それは俺も思った。3年前来た時は涙ぐみながら戦って泣き虫武人と名高かったセオドア様が立派になって………」



 「今ではセオドア様を止められるのはガロ様、リーブ様、ラフェエル皇帝様だけだよな」



 「そうだな。でも、ダーインスレイヴ様を持った場合、リーブ様は勝てないだろう」



 「ガロ様は負けることはないけど、手を抜かないというか。木刀ではなくクナイや短刀を取ってしまわれるから、暗殺者VS皇配争いになるんだよな、構図が」




 「でもそれが見ていて興奮するんだよなぁ」


 「極めつけはラフェエル皇帝様との戦いだよな、ラフェエル皇帝様が強靭な肉体を持つサクリファイス大帝国でも極めて使える者が少ない剣士最高峰の幻の技・『武技』の使い手、あの尊い戦いをこの目で見れるんだぞ?


 俺は一生分の運を使い果たしているのかもしれない」



 「ははっ、わかる。そのうちセオドア様も使えるようになるんじゃないか?」




 「………………」




 聞こえているぞ兵士達よ。

 ふふふ、俺は3年前のヘタレで乙女な俺ではないのだ。お菓子しか作れないなんて言っていた貴方達の予想を遥かに上回る為に皇配として頑張ってきたのだから。



 セオドアは得意になりながら手や足、剣を動かして兵士達をいなしながら考える。




 ………本当に自分がこんなに強くなれると思っていなかったんだ。俺はギャルゲー『理想郷の宝石』の顔しか取り柄のない、その顔も大したことがない平凡主人公だった。女よりもか弱かった俺が、こんなにも強くなったんだぞ?浮かれるなというのが無理な話である。



 とはいえ、未だにダーインスレイヴ無しでは最強な3人には勝てないのだが。でも、平凡では無くなった自信がある。………いや、違うな。平凡でなんて居られない。アミィール様をお守りしたいという気持ちは薄れるどころか日に日に強くなっているのだから。



 それだけじゃない。



 俺は2児の父親になるんだ。

 子供達の前でグズグズと泣く父親にはなりたくない。俺の背中を見て育て!ぐらい頼もしく、強く在りたい。



 その目標の為ならいくらだって拳を振るえるし、足も動く。勝手に木刀さえ振れるしランニングだって苦ではない。



 「何故なら私は父親だから!…………あれ」




 そう浮かれた頭で叫んだ頃には、立っている兵士は一人もいなかった。やばい、やりすぎた。これをしてしまうと____



 そこまで考えてセオドアはドッ、と滝汗をダラダラと流す。この展開は良くない!さすがに強くなった俺でも「セオドア様」……………!



 優しい声が聞こえた。びく、と身体が跳ね上がり、壊れたブリキ人形のようにぎこちなく後ろを向くと____木刀と短刀を手に持ち完全武装した銀髪のベリーベリーショートヘア、赤と金のオッドアイの優男が立っていて。



 「が、ガロ様………………」



 「私にもその尊い戦いの御教授をお願い致します、セオドア様」



 「……………………」




 柔らかい笑みを浮かべているが、赤と金の瞳が妖しく光っている。目が本気と書いてマジと読む……それを見ただけで命の危険を感じる。………父親になる前に死ぬのか?俺は?………いや!俺は父親になるんだ!




 「よ、よろしくお願いします!行きます!


 うおおおお!」



 セオドアは気持ちを奮い立たせてガロに突っ込む。木刀を急所目掛けて突こうとするが、もう首筋には短刀が。



 「セオドア様、今、一度死にました」




 「~ッ!もう一度、もう一度やらせてください!」



 「ええ、心ゆくまでやりましょう」




 セオドアは後ろに飛んで、再び突っ込んだ。




 ____10分後、セオドアは100回死んだ所で『お上手です』とガロに言われて泣いたのだった。












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