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新しい家族 #3

 





 オーファン公爵家はとても広い。人が沢山入れるくらいのスペースがある。そして、今日はその庭が人で埋まっている。心優しきオーファン公爵家を慕っている人々で溢れかえっているのだ。








 その人々に囲まながら歩くのは______俺の兄であるセフィアと、新しく家族になったサーシャ。



 2人ともかっこよくて美しくて、お似合いだな、なんて思いながらセオドアは拍手をしている。



 「___懐かしいですね」



 「ん?」



 その横で、同じように拍手をしていたアミィール様がぽつり、と言った。その瞳は懐かしむような物だ。




 「わたくし達もこうして、結婚したのですものね」



 「…………そうだね。そして…………」



 ___俺達の間に子供達が出来たんだ。



 兄を祝うつもりが、子供達のことばかり考えている。



 兄に幸せになって欲しくて泣いているのか、子供達が出来て未だに嬉しい気持ちが薄れてないから泣いているのか、自分でもわからない。



 折角の祝いの場なのに、情けない。



 けれど____




 「セオ~!」



 「…………兄上」




 そこまで考えた所で、兄上がサーシャを連れて俺の所に来た。後ろで両親が俺の時のように泣いているのに行かないところが兄上らしいな。




 「お前は本当に涙脆いな~、可愛い弟犬め~!」



 「わっ、頭を撫でないでください!私は犬ではありません!」



 こうして頭をぐしゃぐしゃにする兄上は、本当に幸せそうで、さらに涙腺が緩む。兄上に幸せになって欲しい。


 …………婚約者や側近を頑なに持ちたがらず、オーファン公爵家に連なる者以外から『貴族らしくない』、『変わり者だ』、『ヴァリアース大国の恥だ』という酷い批判や反感を買いながら、それでも腐ることなく笑顔で研鑽をし続け、若くして騎士団長となり宰相の父上とは違う方面で国を守っている俺の自慢の兄上だ。


 そんな我が道を歩み続ける兄上は国の事や部下の事ばかり考えてずっと独り身で居るのかも、と不安だったけれど、いい女性を見つけて結婚したんだ。嬉しくないわけがない。




 そう思うとポロポロと涙が零れる。既に目元を赤くしているセオドアを他所に、アミィールはにこやかに言う。




 「おめでとうございます、お兄様、お姉様」



 「お、お姉様なんて………わたくし、恐れ多いです…………」



 「恐れないでくださいまし。わたくし達は姉妹です。…………たくさん、たくさんお話しましょうね」



 「…………ッはい!」



 サーシャも幸せそうだ。

 こうして、家族が広がっていくのは嬉しいことなんだな。



 「セオ」



 「なんですか?」



 「ん」




 兄上は拳をこちらに向けてきた。何を求められているのかわからなくて首を傾げていると『察しが悪いなあ』と呑気な声を出した。




 「私は奥さんを迎え入れ、お前は父親だろう?

 …………私は頑張ってお前よりも幸せになってやるから、お前も幸せをもっと感じろ。


 その誓いだ!昔やったろ」



 「あ…………」




 そうだ。小さい頃、2人で拳と拳を合わせて、些細な誓いを立てたりしてた。………すごく、懐かしい。



 昔のことを思い出しながら、俺も拳を兄上に向ける。



 「………当たり前です、アミィール様と、………俺の子供達で、兄上よりももっともっと幸せになります。


 負けないですよ?」




 そう言ってコツン、と拳を合わせた。

 とても少年漫画にありそうないいシーンだというのに、兄上はとんでもないことを言った。



 「サーシャの腹にいる私の子供もお前達と同じぐらいに産まれるから、遊ばせような」



 「……………は!?」




 突然のカミングアウトに大きな声を出す。兄上は笑って、サーシャは顔を赤らめている。隣にいるアミィール様も口元を抑えて目を見開いている。




 「どっ、どういうことですか兄上!?」



 「今言っただろう。サーシャの腹には私の子供がいるんだよ。今回の結婚もサーシャの腹に子供が出来たからだ!


 はっは~!驚かせようと思ってな!子供が出来るまで結婚しなかったんだ!」



 「兄上………貴方って人は………!」




 本当に滅茶苦茶な兄だ……………!


 セオドアは顔を赤らめながら怒りにぷるぷると震えた。




 こうして、1回の里帰りでセオドアは4人の新しい家族を迎えたのだった。









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