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2つの生命の芽生え

 



 「……………双子……………!?」



 セオドアは口元を抑えながら震えた声を出した。


 急遽医師の診断を受けた。それには土の精霊・グランドと森の妖精神・リーファも付き添ってくれて、子供の大きさ等を詳しく調べた。



 その結果___アミィール様は妊娠2ヶ月という診断が下った。


 泣きすぎて寝てしまったアミィールを他所に、医師は言う。



 「妖精神様達の話によると、双子ですね。心音も2つございますし、間違いないかと」



 「~っ!」




 嬉しくて、思わず1人でガッツポーズを取ってしまう。アミィール様のお腹に俺の子供がいる。それがこんなにも幸せで嬉しくて頭がおかしくなりそうになる。




 「やっ___うわっ!」




 そんなセオドアに、傍にいたラフェエルがぐい、と胸ぐらを引っ張った。浮かれていた頭が一気に恐怖に変わった。



 ラフェエル皇帝様のお顔は___沢山の皺が寄っていた。




 「…………よくやった、セオ」



 「あ、ありがとうございます………?」




 これは喜んでいるんだよな?とても喜んでいるんだよな?怒っているんじゃないんだよな?



 鬼気迫るラフェエルの顔にセオドアはカタカタと震える。そんなずぶ濡れの子犬のようなセオドアから手を離し、背を向けた。




 「…………私はサクリファイスに戻る。セシルに謝っておいてくれ。


 結婚式が終わったらアルティアをよこす。転移魔法で帰ってこい。わかったな?」



 「は、はい!」




 ラフェエル皇帝様はそれだけ言ってふ、と消えた。俺はすぐさまアミィール様の元へ駆け寄る。




 「…………すう」



 すやすやと寝ている。愛らしい寝顔を愛でながら、考える。



 _____これで、『任務』は出来なくなる。それだけじゃない。…………俺達の子供が、産まれるんだ。しかも2人だぞ?一気に2児の父親じゃないか。



 嬉しい。



 嬉しすぎてほかのことがどうでもよくなる。



 兄上の結婚に参加しに来て、新しい家族ができると思った矢先に、自分にも新しい家族が出来たんだ。本当に、本当に…………なんと言えばいいのか分からないくらい嬉しすぎる。



『…………ふふ、セオドア様は面白いな』



 「うわっ!」




 声が聞こえて、思わず大きな声を出した。すぐさまアミィール様を見るけど起きてない。よかった……………。


 そう思ってから、声がした方を見ると___土の精霊・グランド様と森の妖精神・リーファ様。そ、存在すら忘れてた………!



 「あ、えっと………その………」




『ははは、存在を忘れていたか。豪胆な御方だ』



 「な、なんでそれを……!」



『グランドは心が読めるのです』



 リーファ様はにこやかにそう言って、グランド様の腕に抱き着く。すごくいい雰囲気だ…………なんだか、付き合っているようにも見える。でもリーファ様はギャルゲー『理想郷の宝石』の攻略対象キャラだよな?




『急に心が読みにくくなったな。不思議だ…………やはり、アミィール様の選んだ御方だ』



 「あの、…………アミィール様とはどんなご関係ですか?」



 しみじみと言うグランドに聞いた。なんだかアミィール様を見る視線が柔らかくて、嫉妬したのだ。



 グランドは目を細めて天井を見上げた。




『アミィール様は俺を、この世界を救ってくれたアルティア様の御子だ。君の思うような感情は抱いていないよ。


 俺にはリーファが居ますので』



『まあ、グランドったら』



 そう言って微笑み合う2人。…………もしかしてギャルゲー『理想郷の宝石』だというのにリーファが出てこなかったのは………グランドと好きあっているからなのか?



 「………んん」



 「!アミィ!」



 そんなことを考えているとベッドで眠っているアミィール様が動いた。それを見たリーファが『起きる前に退散しましょう』と言って、2人は消えた。



 その直後に、アミィール様は黄金色の瞳を少し開けた。



 「…………セオ様?」



 「アミィ、目が覚めたかい?」



 「ええ。……………あの、えっと、不思議な夢を見て………わたくしのお腹に、セオ様の子供が居る、と………」




 「え」


 アミィール様はたどたどしくそう言う。……さっきのことを未だに夢だと思っているのか…………?



 ___貴方は、本当に…………そういう事に疎い御方ですね。




 セオドアは小さく笑みを浮かべて、困惑しているアミィールに優しく、それでいて熱の篭った声で『それは夢じゃないよ』と教えた。










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