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※皇帝の腰は意外と軽いです

 






 最強最権力者のラフェエル皇帝様が自らしがない他国の公爵家に行こうとしているんだぞ?おかしいだろう。俺はこの現実を受け入れられない。それ以上に愛おしいアミィール様との甘い時間を過ごせないのも受け入れられない。




 側近もアルティア皇妃様もズレていらっしゃる。側近リーブなどは止めるどころか『楽しんで来てください』とにこやかに言うし、妻のアルティア皇妃様に至っては『私が行きたかったのに~!』と頬を膨らませていた。やはりサクリファイス大帝国の皇族とそれに仕える従者達は常識が通じない。




 それはともかく。




 「あ、あの、ラフェエル皇帝様………本当によろしいのでしょうか……いくら私が恐れ多くも皇族に迎えられたとはいえ、私の家に御足労頂くのは…………」




 セオドアはびくびくと怯えながらも言葉を紡ぐ。しかし理不尽皇帝・ラフェエルにはそんな言葉は通じない。




 「くどいぞ。有事があればアルティアが私を呼ぶだろう。誕生日の際、お前に貰ったブローチのお陰でアルティアの転移魔法も使える。



 何も問題がないだろう」




 おおあり!おおありです!

 何故そんなに頑なについてくるんですか!?嫌では決してないけれど、恐れ多すぎて俺は甘い雰囲気どころか命の危険さえ感じているのですよ!




 …………なんて言えるわけもなく。顔を真っ青にしながらカタカタ、と震えるセオドア。それを見たアミィールはやはり不機嫌な声で、笑みを浮かべながら毒を吐く。



 「でしたらそのブローチで今すぐ帰っていただけませんか?空気が淀んでいてせっかくの馬車の旅が楽しくないですので」



 「生憎だな、私はお前達が寝るまで馬車で書類を見ると決めているんだ。私の前で勝手に慈しみあえばいいだろう。


 しっかり見てやるからな」




 「……………………… 」





 そう言って悪い笑みを浮かべるラフェエル皇帝様。勿論義父であり皇帝の目の前で恥ずかしくて愛など囁けるわけが無い。触れることさえ躊躇してしまう。………乙女男子には辛すぎる………………こうしてアミィール様が隣にいると言うのに触れられないなんて…………



 じわ、とそれだけで涙を滲ませる重症なセオドア。こういう時に甘やかしてくれるのは勿論愛おしい御方である。



 「セオ様。紅銀蝿の存在など忘れて、わたくし達は触れ合いましょう。


 セオ様が出来ないのであれば、わたくしが傍に行きますわ」



 「……あ、アミィ……」




 アミィールはそう言ってそ、とセオドアの腕に優しく絡みつく。温かい体温に落ち着く。………でも、我儘で不純な俺はこうして触れ合っているだけで唇を重ねたくなるし、もっとアミィール様の温もりを感じたくなるのだ。



 きっとラフェエル皇帝様が居なければ俺は馬車の中でもアミィール様を求めていただろう。それだけ俺は今、欲求不満である。ラフェエル皇帝様と共に居る時に営みどころかキスさえもできないヘタレすぎる俺は本当に生まれる性別を間違っている。




 アミィール様の爪の垢を煎じて飲もうと思うがそもそもこのお美しいアミィール様に垢などない。あるのは俺が毎日つけている紅い痕のみだ。







 ……………俺よ、1ヶ月、ちゃんと我慢するんだ。ラフェエル皇帝様の前でアミィール様を襲ってはならない。そんなことをしたら俺は物理的にも精神的にも死んでしまうぞ、親しき仲にも礼儀あり、だ。賢者になるんだ俺、俺なら出来るはずだ、頑張れ俺………………




 恐怖と欲情が心の中でごった返しを起こして、ひたすら心を無にすると決めたセオドアでした。










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