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この夫婦、チートにつき

 





 ____折角の楽しいデートでしたのに。



 放火魔に向かって走るアミィールはぎり、と歯ぎしりをする。城下町に火を放ち民衆を困らせている上、セオドア様とのデートの雰囲気をぶち壊した男を____許せるとお思いで?




 「なんだ、燃やされ____っぐぁ!」




 「アミィ!」




 アミィール様は男に近付くとワンピースという事を忘れて、麦わら帽子を落とすのと同時に男に飛び蹴りをかました。それはもう見事な、プロレスでよく見る飛び蹴り。それだけでは留まらずフラフラになる褐色の肌をした男の腕を後ろにつかせてその場に跪かせる。



 アミィール様が怪我をするのが心配なのではない。いや、怪我をして欲しくないのは確かなのだが、アミィール様の強さの前でどんな男も無力なのを知っているから。それより、怒りによりあの男を殺すかもしれないことの方が心配である。俺の奥さんは何度も言うが躊躇なく人を殺すのだ。



 けれども、国民の前というのもあってか武術で痛めつけることに決めたようだ。跪かせるだけでは留まらず無理やり起こして某少年漫画の百裂拳のように拳を振り上げている。



 …………これは止めても止まらないし、この街を燃やした男であるから庇う気は起きない。願わくば死なないで欲しいとは思うが。



 それよりも。



 轟々と燃え盛るこの街を___この、美しい町を黙って見ていることなど、無理だ。俺もサクリファイス大帝国皇族として、看過できない。




 セオドアの水の精霊の契約印に意識を向ける。淡い水色の光から大きな水の魔力を感じつつ、その手を掲げた。その拍子にフードが落ちる。




 「水魔法よ!」




 そう叫ぶと、契約印からたくさんの水が流れ出る。それは宙を泳ぎ____燃えている沢山の店を包んだ。思っていたより店も花壇も木も燃えておらず、少し黒ずんだ位で被害は済んだようだ。




 _____よかった、俺が水の精霊の加護を持っていて。俺も力になれたんだ。



 そう誇らしい気持ちになるセオドアに、アミィールは声をかけた。



 「セオ様!大丈夫でございますか!?」



 「アミィこそ____…………」




 セオドアは街を見るのをやめて、アミィールを見る。アミィールの白い服に水玉模様のように血がぽつぽつついている。膝や革ブーツ、先程まで繋いでいた手の拳にも血が滴っている。そして、その心配げな顔を向けているアミィールの後ろには、見るも無残な放火魔の姿。



 なんというか…………本当にあれは生きているのか?



 「セオ様?どこかお怪我など…………」




 「あ、ああ、大丈夫だよ………それより、アミィは?血だらけだけど………」



 「よかったです、わたくしに怪我はありません。身体に着いているのは下賎なグレンズス魔法公国の者の血なので」




 そう言って安堵しながらにっこりと笑うアミィール様。……………アミィール様はやはり、ズレている所かサイコパスなのかもしれない。勿論そんな所を含めて愛すつもりでいるが、まだ受け入れるのには時間がかかりそうだ。


 そんなことを思うセオドアを他所に、アミィールは国民達に声をかける。




 「誰か、この者が気絶しているうちに駐屯兵を呼んできてくださいまし。皆様縄はお持ちでしょう?」



 「今呼んできております!」



 「私が縛ります!」



 「起きたら今度こそ動けないようにしなければ………」



 そう言う国民達。慣れているのか戸惑っていたり足を竦めている者など居ない。子供も含め全員が手に武器を持ち、どこから取り出したのか縄を持ち、倒れている住民の手当をしたり……迅速に対応している。平和な国とはいえ流石国民さえも武術を身につけている軍事国家である。火を消した俺なんかよりも逞しい。


 誰かに頼ってばかりではなく、自分達も戦う姿勢を忘れず有事に備える……………色んな意味でぶっ飛んでて、色んな意味で素晴らしい国だな。



 「あ、あの!も、もしかしておふたりは………皇女様と皇配様ではございませんか!?」



 「「!」」




 1人の国民の言葉に、動いていた全員の視線が向いた。











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