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※あべこべは健在です

 




 「か、可愛い……………」



 セオドアは目をキラキラさせていた。

 目の前には____大きなクマのぬいぐるみ。アミィール様が『可愛い雑貨屋がある』と言っていて、それで来たのだ。



 俺は乙女男子でぬいぐるみも大好きだ。ふわふわもこもこで首元のリボンが黄色。とても可愛い。




 ……………アミィール様にプレゼントしたいな。



 そう思いちらり、と後ろを振り向くと、アミィール様は向かいの花屋に居た。





 「綺麗…………」




 目の前にはわたくしの城にもないたくさんの花弁が連なっている花。淡い青い色で、セオドア様が喜びそうな花だ。これを買ってあげたい…………!




 アミィールは向かいの雑貨屋を見る。セオドアとアミィールの目が合った。その2人の手には互いの好きな物が。それを見て顔を合わせて笑った。





 ____幸せすぎて、どうにかなってしまいそうだ。




 _____幸福というのはこういうものなのですね。




 なんだかんだ考え方の似ている2人は、それぞれ会計を終わらせ、集まる。最初に動いたのはセオドアだった。




 「アミィ、このぬいぐるみを受け取ってくれるかい?」




 「もちろんですわ。…………セオ様もわたくしのこのプレゼントを受け取ってくださいますか?」



 「もちろんだ」



 2人はプレゼント交換をして、やっぱり破顔する。____素敵なデート、楽しい。



 初めてデートした時はまだ他人で、好きだったけれど…………それでも、今の方が好きだ。



 こんなに月日を重ねても愛が増す一方であれば、わたくし達2人はいつか溶けてしまいそう。




 ____セオドア様となら大歓迎だけど。



 互いのことを思いながら、2人はおでこをくっつけ、慈しみあった。





 * * *




 しかし、楽しい時間はあっという間で、もう帰らなくてはならない時間になっていた。



 「楽しかったですね、こんなに沢山城下町を歩いたのは初めてですわ」



 「………………ああ」



 そう空返事をするセオドアの顔は暗い。

 ____まだ、帰りたくない。



 楽しかったさ、凄く。楽しかったからこそ………もっと、もっとこのひとときを過ごしたい。でも、ラフェエル皇帝様の約束には『日が暮れる前に帰ってくるように』というのがあるんだ。



 …………わかっている、我儘なんだと。

 だけど____帰りたくないんだ。



 ぎゅう、と細く小さい繋いだ手を握る。それを見たアミィールは、少し考えてから『セオ様』と呼んだ。



 「…………なんだい?アミィ。私が黙ったから心配、してくれたのかい?」



 「いいえ。そうではなく____わたくしの我儘、聞いてくださいませんか?」



 「我儘?」



 「ええ。わたくし、………実は、もっともっとこの時間を楽しみたいのです。


 だから___お父様の言うことなど、忘れて、もう少し街を歩きませんか?」



 「…………!」



 セオドアは俯いていた顔をバッ、と勢いよく上げてアミィールの顔を見る。



 アミィール様は自分の桜色の唇に繋いでない方の手の人差し指を立てて、悪戯っぽく笑っている。




 _____この人は、どこまで男前なのだろう。

 いつも、いつだって、俺の気持ちを汲んでくれる。俺が言葉にしなくても『俺が言って欲しいこと』を言ってくれるんだ。



 俺が、はっきり言えない情けない男だとは重々承知なのだが___それでも、この気遣いはいつだって俺を喜ばせてくれる。



 セオドアは嬉しそうに笑って、口を開いた。




 「___うん、もっと、デートしよう」



 「ふふ、………ええ、共に楽しみましょう。では、あちらに___「きゃー!」……!」



 「!」




 不意に、悲鳴が聞こえた。

 俺とアミィール様で悲鳴が聞こえた方向を見ると___とんでもないことが起きていた。




 「サクリファイス大帝国を今から燃やし尽くしてやる!」



 「か、火事よ!」



 「や、やめてぇ!」



 褐色の肌のタトゥーだらけのスキンヘッドの男が、片手に煌々と燃え盛る松明を持ちながら、走り回っているのだ。周りには住人らしき人間が倒れている。それを踏みつけ持っている松明の火をご丁寧に一つ一つの店につけて、街を燃やしている。


 



 大変だ…………アミィール様をまず、お守り_____!?




 「アミィ!?」



 俺の手から、アミィール様の手が離れ、アミィール様は一心不乱にその男に向かって突っ込んでいった。











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