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既にリードされてるVS既にリードしてる

 



 「…………凄い…………」




 セオドアはぽつり、言葉を零す。

 俺達は城下町に来た。初めての城下町は中世ヨーロッパのような街並み、綺麗な建物、活気のある人々で賑わっていて…………アミィール様が以前言っていた『ゴミゴミしている国』だとは到底思えなかった。



 確かにヴァリアースより自然は少ない。けれども、大都会だというのに、ゴミゴミしているわけではなく、全てがお洒落で………乙女心をくすぐった。




 「アミィ、この街は凄いよ!とても綺麗だ!」



 「ふふ、喜んでもらえて、わたくしも嬉しいです。………城下町というだけあって、自然が少ないのは寂しいですけど」



 「そんなことないよ、ちゃんと花壇があったり、この綺麗な街並みを守ってるようで………素敵だ」



 「そう言っていただけると___嬉しいですわ」



 「本当に綺麗であれもこれもと………ハッ!」




 セオドアはそこまで喋って我に返る。アミィール様が囀るように笑っている。か、語りすぎてはしゃぎすぎだろ俺……!もう初めて知らない街でデートしている彼女の反応じゃないか!



 そう自覚するととても恥ずかしくて、赤面してしまう。そんな可愛いセオドアを見ていたアミィールはとても幸せそうだ。



 うう………次こそ男らしく…………ん?




 ザワザワと、街ゆく人々が俺たちを見ている。もしかしてバレた?いや、バレたなら声をかけるだろう、それだけフレンドリーな国民達だ。じゃあ何故…………あ。




 そこまで考えて、気づいた。

 アミィール様のエスコートは貴族が行うやり方で、手を取って歩く手法だ。これを国民がやっているのは違和感である。………そうだ!こういう時こそ恋人繋ぎのチャンスではないか!?それとなく、言ってみよう!




 セオドアは赤面しながらも心を奮い立たせてアミィールに言う。



 「あ、アミィ、このエスコートの仕方では目立つようだよ?」



 「あら、そうなのですか?………でしたら、こちらの方がいいのかもしれませんね」



 「え?___ッ!?」



 アミィール様は自然とエスコートの仕方を変えた。よりによってそれは…………恋人繋ぎで。いや、これをしようとしてたけど!やろうとしてたのは俺なのに!



 セオドアは慌てて言葉を紡ぐ。



 「な、な………なんで、この繋ぎ方を………」




 「…………?ああ、この指を絡める繋ぎ方………セオ様がわたくしを愛してくださる時、いつもこうして繋いでくださいますでしょう?



 この繋ぎ方…………わたくし、大好きなので。エスコートを変えるならこれがいいな、と」



 「____ッ」




 そう言ってアミィール様は繋いでいる手を持ち上げて、歯を見せて笑った。か、可愛過ぎるじゃないか………!俺がやるよりよっぽどロマンチックじゃないか………!なにより、『俺が抱く時やっててそれが気に入っている』って………!殺し文句じゃないかぁ……………




 乙女的にはとてもときめくし、男としては敗北感しか感じられない。複雑な気持ちに見舞われて、じわり、と涙が滲む。顔も赤い。



 それを見たアミィールは首を傾げながら覗き見る。



 「セオ様?……………いや、でしたか?」



 「そ、そうではなく…………わ、私もこの繋ぎ方をしたかったから………その、以心伝心なんだな、と」



 「!………ふふふ、当たり前です。



 ___わたくし達は、夫婦でしょう?」



 「~ッ!」



 そう言って目を細めたアミィール様は美しすぎて格好よすぎて俺がリードするってやっぱり無理なんじゃないかと思わせる。負けるな俺、勝つんだ俺………!



 セオドアはぎゅう、と細く長い指を絡めて握った。






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