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リードしたいVSリードされたい

 





 「ふふ、2度目のデートはどんな楽しみがあるでしょうね?」



 「そ、そうだね」




 セオドアはアミィールにエスコートされながら、城下町に向かっている。その心中は騒がしかった。



 アミィール様に結局エスコートされてるよ俺!俺がさりげなく手を繋いで『いこう』って格好よく言おうとしたのに!うわぁぁぁぁ俺はどうして骨の髄まで乙女でヘタレなんだ……!


 そ、それに……………



 ちら、と歩きながらアミィール様のお召し物を見る。

 いつものような美男子風男装でも、普段着にしてくれているウェディングドレスの試作品である白いドレスでもなく、肩や足が出ている簡素な白いワンピース。


 お忍びだから、という事でこういう格好をしているとはいえ皇族としての格好ではない。けど、1人の男としては美味しい。足も腕も細いし最早天使なんだよ!その上季節外れの麦わら帽子だぞ!?




 背景にひまわり畑があったらそれはもう美しすぎて俺の目は潰れてしまうだろう。何が言いたいかと言うと滅茶苦茶可愛いのだ。これで奥さんなんて言われてもきっと誰も信じない。それだけ若々しい………あ!



 そこまで考えて、セオドアは閃く。

 少女漫画のデートではこういう時『服、似合ってる』とかいい感じのこと言うものじゃないか!?よし、これは言う____「セオ様」



 「わっ」




 不意に呼ばれて肩を跳ねさせた。俺の手を取って歩いてくれているアミィール様がキョトンとした顔で俺を見ていた。顔に熱が篭っていく。



 「セオ様、どうなさいました?」



 「あ、いや、えっと…………」




 言え!言うんだ俺!

 自分の心を奮い立たせようとするセオドア。そんな中、アミィールが口を開く。




 「____セオ様は何を着ても似合いますね」



 「え…………?」



 そう言われて、俺は自分の服を見る。

 いかにも村人Aという格好だ。少女漫画のようなシンプルで男らしい服からかけ離れた、それこそRPGゲームのモブのような格好。そして、その上で藍色のフードを被っているという何とも変な格好をしているのだが…………




 しかし、アミィール様は俺の全身をゆっくり見て、ふわりと笑みを浮かべる。



 「…………ふふ、露出も少ないですし、お顔も近づかなければ見えないので………わたくしだけがよく見れると考えると………やっぱり、嬉しいですわ」




 「うぐっ……………!」




 「セオ様!?」





 セオドアは自分の服の胸元をぎゅう、と握り締め胸の高鳴りを抑えようとする。心臓の音が物凄く五月蝿い。これはアミィール様の凛々しくも甘い言葉と笑顔によるときめきという症状だ。



 狡い。


 狡すぎる。



 夫で男である俺よりかっこいいことを言えるアミィール様、笑顔は無垢な少女のような清らかさ、完全なる俺のスペック負けである。




 「…………大丈夫ですか?」



 「だ、大丈夫だ……………アミィの言葉が、その、………嬉しくて」



 「____ッ!」




 そういった時のセオドア様は、とても顔が紅く、切なそうで…………愛らしくて。でも、ダメよわたくし。ここでキスはしない……………



 今日、わたくしは決めているのです。

 このデートではセオドア様を引き立てるんだ、と。…………セオドア様がわたくしの為にお父様に頼んでくださったデートですもの。わたくしは、淑女らしくそれを受けたいのです。





『穢れ』や『任務』など忘れて、『ただの女』として、このデートに望むのです!



 _____俺は、今日こそ男らしくデートをリードする。



 _____わたくしは、今日こそ女らしくリードされる。





『リードしたい』乙女男子セオドアVS『リードされたい』男前女子アミィールの戦いの火蓋が切って落とされたのだった。









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