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主人公はデートを申し込む

 




 「おい」



 「は、はい!?」




 そんなことを考えているとラフェエル皇帝様が頭を抑えながらぎろ、と睨んできた。俺は睨まれたカエルのように縮こまる。



 そんなセオドアを目を細めながら見つめる。



 「____お前はそんなに私が怖いのか?」



 「え…………そ、そんなことは………」




 あります、とは言い難い。自然と視線は下を向く。あからさまに目を泳がせてしまう。ラフェエルははあ、とまた大きな溜息をついて言う。



 「…………それはともかく、お前はアミィールの仕事量を知らないのか?」



 「し、ってます………」



 これはダメだと言われる流れだ…………

 それを察して、緑色の瞳に涙を貯めるセオドアに、ラフェエルは顔を引き攣らせながら言う。



 「…………………………視察」


 「………………え?」



 ラフェエルがぽつり、漏らした言葉。セオドアは涙を滲ませながらも顔をあげた。




 「サクリファイス大帝国の城下町での視察があるのは、知っているか?」



 「いえ、……初耳です」




 本当に知らない。視察ってなんだ?

 ラフェエルは剣を片手で弄びながらぽつり、ぽつりと言う。




 「城下町が栄えているかどうかを忍んで視察する仕事がある。…………その仕事を任せたい。


 とはいえ、お前は"治癒血"という強力な力を持つ。任せるには護衛が必要だ。



 ____その護衛にアミィールを選ぼう」




 「……………!それじゃあ!」




 ラフェエルの言葉を聞いて、さっきの涙を流しながらぱあ、と顔を明るくする美青年。




 ……………この男、実は娘なのではないか?



 そんな微かな疑問を抱きつつ、素っ気なく言う。




 「………………アミィールが、いいと言えば行けばいい。ただ、城下町の視察という仕事を全うするだけだ」




 「あっ、ありがとうございます!」




 セオドアは勢いよく頭を下げる。

 やった…………!お許しが出たぞ!俺は男になれたんだ!



 「___話は終わりだ、続きをやるぞ、セオ」



 「はいっ!」




 セオドアは嬉々としながら剣を構えた。そして浮かれた頭で戦いボコボコにされ、ラフェエルは再び頭を抱えたのだった。

 





 * * *





 「なあ、アミィ」




 夜、セオドア様のお部屋でセオドア様お手製のケーキを食べていると、愛おしい御方がわたくしを呼んだ。ケーキを飲み込んでから、口を開く。



 「どういたしました?セオ様」



 「うん、えっと、………アミィに聞いて欲しい事があって」



 「?」

 




 そう言うセオドア様はほんのりと顔を赤らめて目を細めている。どこか嬉しそうな顔だ。悪い報告などではなさそうですが…………なんでしょう?



 首を傾げていると、セオドア様はわたくしの隣に来て、優しい声で言う。





 「_____私と、デートしてくれないか?」

 


 「……………え?」



 唐突なお誘いに、持っていたフォークを落としてしまう。セオドア様は『おっと』と言いながら地面に落ちる前にフォークをキャッチした。



 そして、フォークをテーブルに置いてから、わたくしの顔を見て赤い顔のままぺろ、と口元を舐めてきた。



 …………今日も、セオドア様が積極的です。

 最近のセオドア様の様子が少しおかしいのです。性格が変わったというか、積極的なくらい積極的で………勿論、それが嫌なことなど無く。嬉しいのですが、なにかあったのかな、なんて勘ぐりそうになってしまうのです。



 それよりも。



 「あの、デートというのは………?」




 「…………婚約をする前は、アミィから誘って貰ったから、次は私の番だと思って。


 いや、違うな。___アミィと、デートがしたいんだ」


 「………ッ」



 耳元で甘く囁かれる。耳が蕩けそうなほどの糖度で、顔に熱が集まる。まだ婚約する前のことを覚えていてくださったのも、こうしてデートに誘ってくれるのも嬉しい。けれど…………




 アミィールは顔を赤らめながらも、申し訳なさそうな顔をする。




 「わたくし、仕事が…………」



 「それは大丈夫だよ。………ラフェエル皇帝様が、アミィを連れて城下町の視察してきてくれって。


 だから正確にはこれは仕事なんだ」




 「え!?」
















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