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勝負は決した

 




 「ふっ、はっ、はぁっ!」





 セオドアが激しい猛攻をしてくるのを上手くいなしながら、ラフェエルは思う。


 ____虫も殺せそうになかった男が、ここまで成長したか。

 いくら特殊なダーインスレイヴを持っているとはいえ、それを自分の手足のように扱うのは通常の人間には無理だ。………2年前に来た時は剣すら持てなそうなか弱い男だったのにな。



 人はこんなに変わるのか。まるで小さき頃のガロのようだ。………とはいえガロは特殊で、元々才能が一際輝いていたか。でも、この男の場合は努力の賜物だろう。




 ___毎日懲りずに剣を振るっていたのだな。



 ___か弱い顔で沢山の戦略や太刀筋を考えて学んできたのだな。



 ____精霊たちの加護を一身に受け、それを上手く使うほどのコントロールも身につけたのか。




 それが一つ一つの動作から伝わってくる。アミィールは1つを喜ぶ前に、もう1つと淡々と成長する娘だったが、この男は一歩一歩を着実に覚えてきたのだな。



 言いたくはないが___素晴らしい男だ。人柄も鑑みて一国を背負うのに値する男だ。



 だが。




 「____ここは、"軍事国家"・サクリファイス大帝国だ」




 「っあ!?」




 ラフェエルはそう呟くとセオドアの目の前から消えた。セオドアは目を見開く。ラフェエルは消えたのではない。目も止まらぬ速さで背後に回ったのだ。



 そして。




 「氷魔法」




 「ッああ!!!」




 ラフェエルの言葉に、丸い氷が無数に浮かんで、セオドアの背中に向かって放たれた。それは勿論命中する。



 セオドアの翼は氷によりボロボロになり、その強い衝撃で地面に叩きつけられた。




 「かはっ………!」




 背中が痛い。なにをやられたのか分からない。けど………まだ、身体は動く。



 セオドアはぎゅ、とダーインスレイヴを握って立つ。そして構えた。



 今度はラフェエルがセオドアに向かって突っ込んでいく。二人の剣は再び交わり_____




 「あっ!」




 ラフェエルの一撃で、ダーインスレイヴは吹き飛んだ。それを取ろうと手を伸ばす前に、ラフェエルの剣先が…………セオドアの首筋をとらえた。




 セオドアは一瞬だけ悔しそうな顔をし、大きく息を吐いて___ラフェエルを見上げた。




 「_____まいりました」




 そういったセオドアの顔には困ったような、それでいて嬉しそうな笑みが浮かんでいた。



 ワアッ、と観客が騒ぐ中、ラフェエルはそれを聞くと剣を仕舞い、セオドアに手を差し伸べる。




 「____中々、楽しかったぞセオドア………いや、セオ」




 「…………!へへ、けれど、義父さんに、負けました」




 ラフェエルの素っ気ない言葉にセオドアは笑う。

 ___やっぱり、この人は凄い人だった。俺が戦うなんて烏滸がましい人で、俺の未熟さばかりが目につく戦いだった。



 けれど。




 やってよかった。楽しかった。

 こんなに楽しくて熱くなったの、初めてだ_____


 セオ、とラフェエル皇帝様に呼ばれた時、そう思いながら差し伸べられた手を取ったんだ。





 * * *




【「えー、ではでは、今回の下克上闘技大会の表彰をしまーす!」】




 舞台上に降りてきたアルティアの言葉にまたまた観衆達が沸く。その後ろには_____表彰台。6位までの段が並んでいる。



 6位、5位は武術にて結果を残した農民、4位はしがない魔導師の老人で段が低い。けれども全員嬉しそうに笑っている。



 そして。



 少し高めの3位の段には1位の段に座る人間を射殺すような目で見ている紅銀のポニーテール、黄金色の瞳、赤と黒の鎧を纏った皇女・アミィール。


 3位より高めの2位の場所には顔を赤らめつつ下を向く群青色の短髪、緑色の瞳の質素な鎧を着た皇女の皇配・セオドア。



 1番高い場所にある1位には____表彰台だと言うのに豪奢な椅子に悠々と座り無表情の紅銀の短髪、紅い瞳の皇帝・ラフェエル。




 ____1、2、3位を皇族が独占するという異例事態が起きている。それを見て国民達が盛り上がらない訳がなく、熱気は最骨頂だ。因みに、これによって表彰台にはいない6位以下の国民、兵士も入賞という形になった。



 それはともかく、2位に立つセオドアは____羞恥に苛まれていた。

 俺…………ここにいていいのか…………?アミィール様との戦いはアミィール様が引いてくれたから勝てたってだけで実力じゃないんだぞ………?場違いすぎるだろ俺……………


 ラフェエル皇帝様は手を抜いてたのに俺は負けたんだぞ…………?トーナメントすら出ずにズルしてここに居るんだから最下位だろ俺………………国民の前でなければ泣いてた…………今も泣きそうだ………











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