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世の中諦めも肝心

 




 そんな鉄球がついていたら流石のアミィール様も……………


 一気に不安になり、俺は再び闘技場を見ると____




 「ま、まいりました…………」




 アミィール様は定位置から1歩も動かず、尻餅をつく目の前の屈強な男に木刀の剣先を向けていた。ワアッ、と歓声が上がる。ものの3分で終わらせている…………だと!?




 そして驚く事に、その屈強な男はいかにも優勝候補とばかりに先程乱舞を見せていた男だ。なんというか…………完全に俺の杞憂だった。



 呆然とするセオドアにアルティアはくすくすと笑みを浮かべながら言う。



 「___あの通り、勝てないと判断したら『まいりました』と大きな声で言う。それで試合終了よ。


 でも、セオドアくんは『まいりました』って言うのは禁止ね」



 「なっ、なんでですか!」



 「だって、セオドアくんはアミィールを止めたいのでしょう?命懸けでぶつかって向き合わないと」



 「…………本心は?」



 「夫婦対決を長くみたいから☆ぜったい楽しいじゃない、きっと国民だって心が踊るわ!」




 「………………」




 良くも悪くも素直すぎる人である。この人の娯楽の為にこの催しをしているのでは?なんて思う程。そして、舞台では何人も男は倒されて、とうとう5人目が来た、という所でアルティアはぽん、とセオドアの肩に手を置いた。




 「じゃ、頑張ってね___転移魔法」



 「え、ちょ____わっ!」




 アルティア皇妃様の笑顔を最後に、俺は転移させられた。冷たく色気のない通路。入口らしき所から光が差し込んでいる。



 ほ、本当に俺はこんなことをしなければならないのか…………?相手は強くて美しいアミィール様だぞ?そして愛する奥さんだぞ?そんなの、勝てるわけないじゃないか………!





 やばい、泣きそうだ。こんなことしたくない。けど、しなければ離婚だ。冗談だと思いたいがあの理不尽な夫婦はそれを敢行するだろう。アミィール様も止めてくださると思うけれど…………これで喧嘩に発展でもしたらそれこそ城は崩壊するし、なにより愛する人が俺のために家族と喧嘩するのは見たくない。





 「…………出るしかないのか…………」





 セオドアはぽつり、そう呟いて甲冑を被る。それと同時に歓声があがった。



【「はいっ、5回戦目も終わりました!頑張りましたねー、けど、魔法を使うのであればもう少し頭を使いましょう。応用魔法を使えば勝てるなんて浅はかな考えだと自覚しましょうねー!」



 「範囲を拡大させたいのならもう少し魔法をコントロール出来るようになれ。上位魔法を使いたいのであれば発動時間もちゃんと計算せねばならないことをこの1戦でしっかり噛み締め、励め」



 「皇帝様がここまで言うのは滅多にないから高得点~!暫定2位ですね~!


 では、最後の試合を行いましょう!通例6人のトーナメントですけど今回はサプライズ!私が目をつけた騎士を参加させます!皇妃権乱用なんて聞きません☆


 ということで!『心優しき可愛い女の子のような振る舞い!でも身体は男!優秀かつ私1押しの謎の騎士!』剣士セド!姿を現しなさ~い!」】




 「…………………」




 このこっ恥ずかしい説明で舞台に上がれと言うのか?なんだよそのナレーション、おかしすぎるだろ……………




 そんなことを思いながらも、押しに弱いセオドアことセドは泣きたい気持ちを抑えて入場口から出る。ここから見るとたくさんの観客が居ることがより分かるし、大盛り上がりなのが伝わってくるしプレッシャーを感じずにはいられなかった。





 極めつけには____凛と立つ美しすぎる美男子…………ではなく、自分の妻である女。いつもの笑顔ではなく、気高い騎士のような堂々とした存在感。




 足は竦む。それ以上にいつもの優しい笑顔がないのは…………寂しかった。





























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