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※少しこの扱いに慣れました

 





 「で、だ。今年は誰が出る?」




 呆然とするセオドアを放って、会話は続く。ラフェエルはちら、とアルティアを見るがアルティアは知らぬ存ぜぬ顔でパスタの最後の1束をフォークで絡みとり口に含む。完全に興味を失っている。わかりやすい女である。しかしそれをさせておくラフェエルではない。




 「アル、私の話を聞け」



 「聞いてるわよ、察しが悪いわね。


 私はパース、だって魔法1発で瀕死にさせちゃうんだもん、人間相手の加減は面倒だしつまんない。


 アンタが出れば?」



 サラッとこう言うアルティア皇妃様はやっぱり恐ろしい御方である。そしてこの人も。



 「…………私は前回出た。あんな子供の遊びに興じるのはつまらん。


 そこで、セオドア」



 「は、はい!?」




 突然呼ばれて背筋が伸びる。この流れ、まさかまさかだよな…………?



 次に発せられる言葉が分かりきってて震えるセオドアの掌にそ、と小さな手が触れる。見ると、やっぱりアミィール様が優しく微笑んでいた。




 「わたくしが出ます故、セオドア様はご心配なさらず」




 「な、ダメだ!私が出る!アミィに危険な事など……「わたくしは6歳から出場してますので慣れています」……う」




 そう言われると言葉に詰まる。というか6歳から大人相手に皇帝の座をかけて戦う子供って強すぎないか?この3人でこの大きな国を回している事実は伊達じゃないというか…………って、そうではなく!




 「し、しかし、……アミィが傷つくのは……」




 「大丈夫ですよ、この大会で手傷1つ負ったことがございませんので」




 「……………決まりだな。では10日後はお前が出ろ、アミィール」



 「は、見事に勝って見せますわ、お父様」




 アミィール様はそう言って座りながら綺麗なお辞儀をする。けれど俺の心中は複雑である。



 アミィール様は確かにお強いが……しかも大きな行事の参加者を今この場の軽いノリで決めてしまうあたりがもうほんと、ついていけない、凡人には怖い領域だ………………俺本当にこの皇族の一員でいいのか…………?




 すっかりマイナス思考に陥ったセオドアはこの後の食事が喉を通らなかった。








 * * *




 「……………ううっ…………」




 下克上闘技大会5日前、セオドアはひまわり畑にてやっぱり泣いていた。理由はいつも通り___この大人達のせいである。



 セオドアが涙目で前を見ると____義母のアルティア、黒と白のごまプリン頭、黒瞳のセイレーン皇国の皇族であり聖女、フラン・ダリ・ジュエルズ・セイレーン、深緑髪、黄緑瞳のヴァリアース大国女王陛下、エリアス・ラピュード・ヴァリアースの3人がいつも通り酒を飲んでいる。



 ここまで言えばわかるだろう。俺はいつもの如く___女装をさせられていることを。



 セオドア_ウェーブのかかった群青色の長髪、派手な化粧、白いミニスカ姿_はプルプルと震えながら涙を堪えている。もう19歳になるのに……未だにこの大人の悪ノリに付き合わされ……俺は自分がなんなのかさえ分からなくなってきています……




 悲しいことにそんな姿も可愛らしい美男子を見て悪ノリ大人陣はギャハハと声をあげて笑う。



 「今回のはだめね~!ミニスカは流石に足のたくましさが隠せてない!」



 「いや、わんちゃんありじゃないですか?骨太!ってかんじで!」



 「わたくしはこの服よりもドレスの方が好きですわ、化粧もやはり控えめの方が素材の良さが出るというか…………」





 「本当にいい加減にしてください!私は男なのです!アミィール様にこんな姿を見られたら私は…………!」




 「なに?水着を着てみたい?ビキニ着る?」



 「き!ま!せ!ん!」



 すっかり慣れ親しんだ大人達にセオドアは吠える。この1年をかけてやっとこの重要人には強く否定しないとダメだと思ったのだ。しかしそんな姿も可愛らしくて3人はほっこりする。



 アルティアはオランジェットを食べながらその様子を愛でる。




 「セオドアくんが男の子なのはわかってるわよ~、この前アミィールを孕ませるって宣言したものねぇ?」



 「んなっ!その話は___「「そうなんですか!?」」うわっ」




 アルティア皇妃様の言葉を遮ろうとしたが時すでに遅し。勿論悪ノリ大人陣2人がそれを聞いて黙ることなどなかった。









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