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密かな野望?

 




 「10日間世話になったな、セオ」



 「…………ええ」




 ヴァリアース大国騎士団一行が来て10日、今日はセフィアを初めとする騎士団が帰る日だ。しかし、セオドアの顔は不機嫌を極めていた。



 …………結局10日間本当に俺の部屋に居続けた…………もう過ぎたことだけど、部屋を滅茶苦茶に散らかされた事は許せない。




 ふてくされるセオドアを他所に、横に立つアミィールはにこやかに言う。



 「また、いらしてくださいね。10日間楽しかったですわ」




 「私もです。勉強にもなりました。…………セオの様子もよく見れたし」



 「ッ……兄上、もう帰ったらどうですか?他の騎士団の方々は行きましたよ」



 「冷たいなぁ、お前の大好きな兄が帰るというのに。まあ、追いつけなくなる前に行くか」



 セフィアはそう言って美しい栗毛の馬に跨る。やっと帰ってくれる………と安堵しているセオドアを他所にセフィアは『あ、そうだ』と何かを思い出したように口を開いた。




 「セオ、私は3ヶ月後に結婚するからお祝いに来てな」



 「……………はい?」





 セオドアは素っ頓狂な声を出す。

 唐突な結婚宣言。は?は………?


 混乱するセオドアにセフィアは笑いながら念を押すように言う。





 「お祝い頼むぜ?んじゃあよろしくな~!」



 「ちょっ、兄上!?」



 セオドアが何かを言う前にセフィアはさっさと馬を走らせた。遠くなっていく背中を見ながら、セオドアは愕然としていたのだった。






 * * *





 「兄上はどうしてそう色々唐突なんだよ!」




 セオドアは自室のソファの上にあるクッションに顔を埋めて大声で怒鳴る。皮肉にもクッションは柔らかく、セオドアの言葉は響かない。



 不機嫌な主人を見て、執事のレイはセフィアが散らかしたものを片付けながら苦笑いを浮かべた。





 「セフィア兄はなんも変わらないなぁ、なんでも突然過ぎるんだよな」



 「本当だよ!というか10日も居たのに!帰り際にサラッと言うのが腹立つ!」



 セオドアはぷんすかと怒っている。



 そんな大事なこと話さずにこの部屋でだらけるだけだらけて………!どんな女性なのかとか気になるじゃないか!昔っからそういう重要な事を言わず巫山戯てばっかりだ!なんで俺の周りは滅茶苦茶な人ばかりなんだ…………!




 「…………セオドア、考えていることが全部口に出てるぞ」



 「う…………で、でもそう思わないか?レイ」



 「まあな、でも昔からだろう、あの人は」



 「そうだけどさぁ………」




 セオドアは脱力したように再びクッションに顔を埋める。…………兄上が結婚か。まあ、もう23だし遅いくらいだけどさ…………ちゃんとお祝いの言葉とか言いたかったのに…………騒ぐだけ騒いでいってさ………



 そこまで考えてはあ、と溜息をついた。

 とはいえ、そんな兄でも俺の大切な人だ。なんとかアミィール様と俺の執務の調整をして、参加したい。




 ……………アミィール様、か。

 最近、俺はアミィール様をひたすら愛している。前々から愛しているけれど、それ以上に狂おしいほど率先して抱くようになった。



 ビビりなヘタレの俺でも、ちゃんと男だ。…………アミィール様との子供を作り、アミィール様をなんとか『任務』から遠ざけたいのだ。



 人殺しをさせない。けれど止められない。ならば出来ないようにする。…………俺の考えつく方法。


 そりゃあ、やっぱり大事にしたいけど………いや、大事にしたいからこそ、俺が頑張らねばならないのだ。



 それであわよくばアミィール様がもう剣を持たなくなってくれればいい。………もう『穢れている』と泣くアミィール様を見たく、ない。




 ___どんなに穢れていても、愛すけどな。




 「………………なあ、レイ」



 「なんだ?」



 「どう愛すれば妊娠ってするんだ?やはり数か?それともなにかコツとかあるのか?」



 「え」





 大真面目にそう聞いてくる主人に、持っていたゴミ袋を落としたレイだった。

















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