表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

218/470

兄の忠告

 




 「____当たり前です。

 アミィール様がどんな御方なのかは私が1番よく知っています。2年も想い続けたのです。


 …………もう、アミィール様のいない生活など、アミィール様のいない人生など考えられません。



 アミィール様は私の傍に、私はアミィール様の傍に………これは譲れません。私が私でいる為には、アミィール様が居なければならないのです」




 弟・セオドアが男らしい顔でそう述べた。



 …………どんな御方か知っている、か。でもこの様子じゃ、アミィール様が『任務』をしていることを知らないのだろう。



 この弟は、何も知らず生きているんだ。


 それを言わないとアミィール様はお決めになったんだ。



 …………私が口を出してその気持ちを無下にするのはよくない。わかっている。けれど………あまりにもアミィール様が不憫で、あまりにもアミィール様が悲しいではないか。



 ぐ、とセフィアは顔を顰めた。セオドアはちゃんとそれを見ていて………知ってしまった。




 兄上は何かを隠そうとしている。…………アミィール様のように、隠そうとしているんだ。



 一緒だ。



 アミィール様が『自分は穢れている』と泣く時のような、そんな雰囲気を感じて。感じたらさ、我慢なんて出来なくて。




 セオドアはゆっくりセフィアに詰め寄る。夜だから静かな声で、だけどしっかり言葉にして。




 「兄上、どうかお願いします。___私に、隠していることをお教えください。



 アミィール様の『穢れ』とはなんなのでしょう」



 「…………!」



 兄上の表情は固まった。説明していないのに『穢れ』という言葉だけでこんな顔をするんだ。………俺が知らないことを知っているんだ。



 そう思うと、心に暗い影を落とす。暗くなる気持ちで、今すぐアミィール様を抱き締めたい気持ちをぐ、と抑える。



 セフィアは最初こそ固まっていたけれど…………すぐに、セオドアと向かい合い、重い声で言った。




 「____お前は、お前だけは何も知るな」



 「なんでですか!私は、アミィール様の「夫だから、アミィール様がお前を愛しているから聞くな、と言っているんだ」…………?」



 兄上は俺の両肩を掴んで、懇願するように言う。


 「アミィール様の御手は、『穢れている』。どうしようも無いことで、もう引き返せないんだ。


 だが、だが____その『穢れ』を知らない人間が、アミィール様にとってどれだけ幸せに感じると思う?どれだけ安心できると思う?



 アミィール様の愛するお前だから___尚更知ってはならないんだ。



 アミィール様の涙を見たくないと言うのなら、絶対知るな。…………お前だけは変わらないでくれ、頼む」




 「……………ッ」




 そう言った兄上の目には___珍しく、涙があった。そんなに、そんなに重いことなのか?それを俺は知ってはならないのか?………何故、アミィール様は言ってくれないんだ。



 俺は____そんなに頼りないのか?



 涙を流すセフィアとその思いに苛まれ涙を滲ませるセオドアは、月の下で静かに泣いた。




 * * *




 「じゃあ、セオ、よろしく頼むな」



 「…………はい」



 俺はしばらく泣いてからその言葉を受けて部屋の中にはいった。………苦い気持ちが胸を占める。口の中もカラカラで苦い。



 苦い、苦い。



 アミィール様の秘密を俺は知らされなかった。知りたかったさ。無理矢理聞き出そうと詰め寄ったさ。けど、兄上は一言も言ってくれなかった。まるで、俺が知ったらアミィール様と共にいられない、みたいな言い方で。



 「_____クソ」



 また、自分の無力さに毒を吐いた。

 愛する人のことを全て知りたいのは当たり前だろう?愛する人が悲しんでいたらなにかしたいだろう?でも、無力な俺は何も出来ないんだ。何も知らない俺はアミィール様から幸せを貰うことしか出来ないんだ。



 ヒモのような男だ。本当に自分に嫌気が____「セオ様ッ!」………!




 「わっ」




 そんなことを考えながら、寝室の扉を開けると____それと同時に紅銀の髪の愛おしい御方が裸で抱き着いてきた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ