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主人公は皇女を想う

 








 「………………すう」




 「ふ、…………」




 寝室にて、裸のセオドアは笑みを零していた。その理由は1つ。隣で同じく裸で寝ている愛おしい女の寝顔を見ているからだ。




 …………アミィール様の寝顔は殆ど見られない貴重なものなのだ。今日のアミィール様はなんだか、激しかった。


 月に何度か、こういう日がある。

 アミィール様が夕方ぐらいに来て、『愛してください』とおねだりしてくる日が。今日がそうだった。



 ___そういう日はいつも、どこか悲しげなんだ。

 力なく笑って、『愛してください』と言うのだ。



 俺はその理由を…………未だに知らない。

 聞きたいさ、凄く。何があったのかを聞きたい。



 でも。




 _____俺が聞いたら、きっと悲しむ。



『代償』の時もそうだった。アミィール様は隠していた。あの時はショックが大きかったけれど……きっと、俺だからこそ言いたくないのは、わかっている。



 信用されていないわけじゃない……と信じたい。これは願いに近いのだ。



 アミィール様は俺をとても愛してくれているから。


 俺が出来るのは、その悲しみを少しでも癒すだけ。




 「____無力だな、俺は」



 「そんなことねえよ」



 「………!」




 ぽつり、呟いた時、合いの手が入った。

 セオドアは咄嗟に寝ているアミィールに布団を顔まで引き上げて、声の主を睨んで静かに言う。




 「……………兄上」



 「そう邪険にするな。……………外で、話そうぜ」



 「ここは私の寝室です」



 「わかっている。…………どうしても、お前に聞きたいことがあるんだ」




 「………………」





 月明かりに照らされた兄上は、真剣な顔をしていた。アミィール様との空間を邪魔されたのは腹立たしいけれども、それでも……行かなくてはならない、と思わせた。




 セオドアは近くに落ちている夜着を身にまとって、セフィアと共に外に出た。






 * * *



 「ほう、景色がいいな」




 俺たちふたりは俺の部屋にあるテラスのようなベランダに出た。なかなか広く、兄上の言う通りサクリファイス大帝国を一望できる俺の部屋は景色がいい方だと思う。


 でも、そんなことよりも。





 「兄上、話とはなんでしょうか?」



 「そう急くなって。ゆっくり話そうぜ」



 兄上はそう言って力なく笑う。____その顔は、アミィール様もしていた。


 もしかして。



 「…………兄上、兄上は今日、アミィール様と居たのですか」



 「………………」





 兄上は無言で眼下に広がるサクリファイス大帝国を見ている。…………兄上はお調子者だし巫山戯ていることが多いけれど、嘘をつかない。つく必要がないから。だからこの沈黙は肯定を意味していると分かった。


 


 アミィール様を誑かしたりしない、それはわかっているけれど、いい気持ちはしない。…………どうやら俺は、アミィール様の事になると冷静でいられないようだ。





 「兄上、私の質問に答えてください。


 今日なにがあったのです?」




 「_____お前は、アミィール様と本当に生涯を共にできるのか?」



 「え?」



 返ってきたのは、俺の問いへの答えではなく、問いだった。しかも唐突すぎる。でも、兄上はそれだけでなくこうも続けた。




 「____アミィール様がどんなことをしてても受け入れられるか?どんな彼女も愛せるか?……なにがあっても、離れないと言えるか?」




 怒涛の問いかけ。質問の意図はわからない。けど、その言葉の答えはアミィール様と婚約してからなにもかわらない。


 セオドアはセフィアの隣に来て、悲しげな顔をする兄にはっきりと言った。









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