※皇族夫婦達は甘々です
「サクリファイス大帝国の牛肉はこんなに柔らかいのですね。ヴァリアースでは味わえません」
「あらお上手。もっと食べて頂戴、セフィアくん」
「ありがとうございます」
「…………………」
セフィアとアルティアは仲良く話している。それを憎らしげにセオドアは見ていた。
……………今日は、兄上が来たから急遽会食となった。勿論、俺は『そこまでしなくとも』とは言ったが、兄上に輪をかけて自由奔放なアルティア皇妃様が通常運転で『家族だから!』と押し切った。
この2人は仲良く話しているが、初対面であるラフェエル皇帝様は厳しい顔で兄上を見ている。大方自分の奥方が楽しげに話しているのは気に食わないのだろう。俺もとてもそれはわかる。何故なら…………
「お兄様、わたくしのステーキも食べてくださいまし。遠くから来たのですから沢山食べていらして?」
「ええ。ありがとう、アミィール様」
「ふふ、どういたしまして」
「…………………」
……………このとおり、アミィール様とも和気あいあい話しているからだ。俺の心中は穏やかではない。そしてさりげなくアミィール様の反対側の席に居るのが気に食わない。いくら兄とはいえ、他の男を愛する人の隣に座らせたくない。
「………?セオ様?」
「あ、………ッ!」
むす、とするセオドアに気づいたアミィールはセオドアの顔を覗き込む。口元に料理のソースがついているのに気づきふ、と笑ってから口元を舐めた。
セオドアは声を無くして顔を赤らめる。そんな愛らしい男にアミィールはくすくすと笑って声をかける。
「ふふ、……セオ様ったら可愛いです」
「あ、アミィ…………」
本当に俺は単純で。恥ずかしいのに、何も変わらないいつもの仕草で兄上なんてどうでも良くなる。
この光景は日常茶飯事なのだが、セフィアには新鮮に映って。『ほう』と感心したように言う。
「セオとアミィール様は相変わらず熱いのですね。新婚を経てなおのこと仲睦まじい」
「そうなのよ~こういうことを人前でしちゃうくらいには仲良しなのよ、ねえ、ラフェー」
「……………言ってもやめないからな。
それより………セオドアの兄なのだろう?騎士団長と聞いたが、ヴァリアースでの鍛錬というのはどういうものをしている?騎士達の士気は?」
「ああ。それはですね…………」
「おお…………!」
セオドアは思わず感嘆の声を漏らす。
ラフェエル皇帝様と兄上が喋ってる……しかも、スムーズに…………俺は初めて出会った時『歓迎しない』と断言されたのにな……やはり、俺と兄上では……
「セオ様」
「?………………っん」
感嘆から不甲斐なさに思考がチェンジして、暗い気持ちになり涙を滲ませているのをアミィールは見逃さなかった。ナイフとフォークを置いて、自分の方を向かせて触れるだけのキスをする。ほんの一瞬で離れて、セオドアの頭を撫でた。
「セオ様、___自分と比べる必要はございませんよ?」
「…………ッ」
セオドアは目を見開いてから、目を伏せた。……やっぱり、アミィール様は俺の心が読めるようだ……いっつも凹むと気づいてくれる……
不甲斐なさがじんわりと溶けていく。
そんな甘い雰囲気に大人達は話す。
「……申し訳ございません、私の弟が涙脆い男で……」
「……………いや、これは私の娘が恥知らずなだけだ」
「仲が良すぎるのはいいんだけど、食事中なのは忘れているわね~、本当に、誰に似たんだか。絶対ラフェーだけど」
「………………アルだろう」
「違うわよ、絶対ラフェーよ。私はどちらかというとセオドアくんに似てるでしょう?」
「……………罰を落とすぞ」
「私もちゅーするから許して」
「…………………」
この皇族全員熱々だな、と思ったセフィアでした。




