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Birthday Night . #皇帝夫婦編

 





 「………………………」






 「……………………」



 同時刻。

 皇帝の部屋も静まり返っている。こちらは空気が重いわけではなく、サクリファイス大帝国皇帝ラフェエルは無言で黒色のブローチと赤と金のタイを見ていた。



 それはもう眉間にこれでもか、と皺を寄せて。


 それをアルティアはにやにやしながら見ていた。



 …………余程婿殿のプレゼントがお気に召したみたい。いや、あれはお気に召した、というより感動してるのかしら?



 私達の娘・アミィールはとても可愛くない娘である。小さい頃から、それこそ赤ん坊の頃から可愛くなく、頭の硬い父親から産まれた頭の硬い娘でプレゼントなんてあげるタイプの子ではない。普通の子供なら絵でも描いて『ぱぱー!』なんて言うものだろうが、そんなことはなかった。



 そんな可愛らしいプレゼントではなく『成果』ばかりをプレゼントしてきたのだ。



 赤ん坊の時は『空中浮遊』や『空中歩行』、少し大きくなったら剣術や武術で沢山の賞を捧げてそれをプレゼントにしていたのだ。



 こちとら可愛い物が欲しいのに物ではなく結果って!母親の私はそんな育て方をしていない!



 ………まあ、それは置いといて。とにかくラフェエルは『形に残る』プレゼントを貰ったことがない。だからこのとおり、息子から貰ったものに感動をしている。



 我が夫は不憫だなあ、なんて思いながら、未だにプレゼントを眺めているラフェエルを後ろから抱き締めた。




 「ラーフェ!いつまで見てるのよ!私だってプレゼントあげたんだから~!」



 「………………」



 「ねえ!聞いてる!?アンタ、プレゼントはこれだけじゃないよ!今年も恒例!プレゼントは私☆もやるよ!」



 「……………」




 見てください、この石像。

 愛する妻の言葉なんて今のこの人には聞こえてません。皇帝だのなんだの世間では言われているけど、箱を開けてみれば素直に喜ぶことが下手くそな不器用な男なのです。………こういう所をアミィールが引き継いだせいであんな可愛げ無い性格になったんだと思います。




 とはいえ、この人が居なければ今の私の自由はなかった訳で。



 アルティアはそこまで考えて、逞しい首に腕を巻き付け、耳元で優しく言う。



 「…………それ、ちゃんと使ってあげようね。セオドアくん、ラフェーの為に作ってくれたんだから」



 「………やはり、使わなければならないだろうか。


 使ってしまっては…………汚してしまうだろう」




 やっと口を開いたラフェエルはそんなことをしみじみと言う。それを聞いたアルティアは少し驚いた顔をしてから、優しく自分の方にラフェエルを向かせて笑ってみせる。





 「ふふ、その時はまた作ってくれるわよ。


 …………セオドアくんは、これからもプレゼントくれるんだから、さ」



 「しかし…………アミィールの任務のことを知ってしまっては…………いなくなるかもしれないだろう」




 「それは___」




 アルティアの言葉は詰まる。『任務』………アミィールの選んだ道。自分で初めてやると決めたこと。私はセオドアくんのように優しい訳では無いから心は痛まない。…………けれど、セオドアくんは優しいから傷つくかもしれない、いなくなるかもしれない。寂しいけど、そうなっても悲しまないように普段から気を引き締めなければ…………なんて、思うけどさ。



 アルティアはそこまで考えて小さく首を振り、やっぱり笑顔を作った。



 「そんな面白くないこと言わないで。

 

 楽しみにするのは、タダでしょう?」





 「ふ、…………ああ、ほんの少しだけ楽しみにするとしよう____」





 ラフェエルはアルティアの言葉を聞いて、ほんの少し笑みを浮かべてから2人は唇を重ねた。

 娘夫婦のように甘いだけのキスじゃない、少しだけ苦いキスを____しばらくしていた。












※ご案内


皇帝×皇妃の恋愛模様は前作を参照下さい。

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