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子供からのプレゼント

 



 「ふふ、ラフェー、あーん」



 「……………はしたないからやめろ」




 「セオ様もわたくしが食べさせましょうか?」



 「う、い、いや、私は………その………」




 家族団らんの場、それぞれがそれぞれの愛する者と2人の世界に入っている。

 今日は愛する人達の誕生日。イチャイチャするなと言うのが無理だ。




 けれど、俺にはやらなければならない使命がある。




 そこまで考えて_意を決してアミィールの手からパンを食べてから_立ち上がる。そして、ラフェエルの近くまで来た。ラフェエルはやっとアルティアから目を離し、不思議そうな顔をしてみた。




 「………?なんだ、セオドア」



 「ッ、その、えっと……………」




 セオドアは顔を赤くして、モジモジとしている。まさに、女子がやるそれだ。顔が整っている分女にも見えなくもない。…………男色趣味の男には好かれるような男だな。



 そんなことを思いながら、ラフェエルは厳しい瞳でセオドアに言う。



 「セオドア。用があるならしっかり目を見ろ。サクリファイス皇族たるもの、自身が考えて動いた事に躊躇をするな」




 「う、……は、はい。では…………


 その、お誕生日おめでとうございます!」



 「ッ!?」





 セオドアはバッ、と頭を下げて小さな袋を渡してきた。女子のプレゼントするような可愛らしいラッピングではあるが、皇帝に差し出すものではない。それは分かっているさ。けれど、………皇帝の前に、俺のもう1人の父親だから。枯れる声で、必死に言葉を紡ぐ。




 「お、恐れ多くも………勝手にプレゼントを用意させて頂きました………男手ですし、気に入らなければ捨ててもらってもよろしいので、受け取ってください」




 「…………………」




 そう言って耳まで赤くし、涙目で見てくるセオドアに、ラフェエルは少し驚いていた。

 アミィールからでさえプレゼントを貰ったことがないのに、血の繋がらない皇帝にプレゼントなど男子がするか?このような時、私はどうすれば……?



 そう思うラフェエルの背をぽん、とアルティアは叩いた。そして、心を読んだようにいう。



 「…………こういう時はありがとう、と受け取ってその場で見るものよ」



 「………………」



 ラフェエルはそれを聞いて、何度か戸惑いながら、それを受け取った。覚束無い手で包装紙を解くと_____赤と金の煌びやかで精緻なタイと、アルティアの髪と同じ、黒色の石のついたブローチ。ブローチからはアルティアの魔力を感じる。




 「これは…………?」




 「えと、タイは手作りで……ラフェエル皇帝様はよく、タイをつけていらっしゃいますし……ブローチは、アルティア皇妃様の魔力を少し頂いて、魔法を吸収する珍しい石を嵌め込んで作ってみました………」




 自信なさげにそう答えるが、2つとも職人が作ったように美しく、きめ細かい物で。所々に見える気配りが…………胸を熱くした。

 


  初めて、子供からプレゼントを貰って…………どのような顔をすればいいのかわからない。ラフェエルは眉間に沢山のシワを寄せて口元を抑えて、声を咬み殺す。




 「…………ッ」



 「………………」




 セオドアはそんなラフェエルを見る。………喜んでもらえる自信がなくて、ビクビクしていたけれど……沢山、眉間にシワが寄っている。

 これは、ラフェエル皇帝様が美味しい物を食べた時の顔だと知っている。



 だから、それを見て___俺は胸が熱くなった。



 作ってよかった、って思ったんだ。




 セオドアは笑みを浮かべる。ラフェエルは___しばらく、プレゼントを見て固まっていた。











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