喧嘩=殺し合い
「なあ、レイ」
夜、未だアミィールの姿が見えない中、執事に声をかける。執事のレイはセオドアの前に紅茶を置きながら答えた。
「なんだ?」
「男って女から何をプレゼントされたら喜ぶ?」
「身体じゃねえか?」
「ぶっ!」
思わず紅茶を噴き出す。アルティア皇妃様と同じこと言ってやがる…………!
激しく動揺するセオドアを見てくつくつ、と笑う。
「何動揺してんだよ、冗談に決まってるだろう。本当にやったらさすがにな………まあ、そんなことできる人なんていないだろうが」
いるんですよそれが。とても身近にいるんです。やってる人が。
とはいえず、俺は改めて聞き返す。
「真面目に!俺は真面目に聞いているんだ!」
「はいはい。………貰って嬉しいといえば、やっぱりアクセサリーとかじゃないか?付き合っているなら………って、なんで女が男にプレゼントなんだ?
アミィール様のプレゼントに悩んでいるんじゃないのか?」
「う、………そ、それは…………」
言葉に詰まった。
レイが相手とはいえ、サプライズプレゼントなのだから秘密にしなければ………というか、『自分が考えたプレゼント』をあげるのが大事……………あ。
「そうだよ!自分で考えないと意味が無いんだよ!」
「はあ?」
「レイ!頼みがあるんだ!」
「なっ、なんだよ!」
セオドアはガッ、とレイの肩を掴んで『ある事』をお願いした。
* * *
「アミィール~!」
「帰ってください」
執務室に来ると我が娘が私を見ることなくピシャリ、と冷たい声でそう言った。…………うーん、最近みんな私の扱い雑じゃない?一応皇妃なんだけどな?
それはまあ近いうちにどうにかするとして、私には遂行しなければならない任務があるのだ!
「アミィールは今年は何が欲しい?」
「いりません」
「早いのよ断るのが。『なんで?』とか聞くでしょ」
「どうせ誕生日ですよね。いりません。あんな紙くずを渡さないでください」
…………このとおり、とてもつれない娘です。本当に私この子産んだんだよね?お母さんぞ?我お母さんぞ?……ひっひっふー、落ち着け私、冷静になるんだ私………
感情を無にして笑顔を作ってからこの冷たい娘にもう一度聞く。
「何が欲しいか言わないと私はセオドアくんを____っと」
そう言った瞬間、小刀が飛んできた。顔面スレスレじゃない。脳天直撃。私が直ぐに防御魔法を唱えてなかったら命中してた。
そして、それを投げたのは勿論____目の前で既に剣を構えている我が可愛い娘である。同じ黄金色の瞳なのに鋭く妖しく光っている。
「_____セオ様に何かをしたら、いくら"最強生物"でも"母親"でも許しません。
殺されたくなければわたくしのセオ様に今後一切近づかないでくださいまし」
「悪いわね。私はアンタの親でセオドアくんは義息なのよ。近づかないのは無理な相談ねえ?」
「____ッ、殺します」
「やってみなさいよ、クソガキ」
アミィールは剣を強く握り、アルティアは魔力を纏った。2人の黄金色の瞳が冷たく光った。
* * *
「…………………アミィ、大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫ですわ」
そう優しく微笑むアミィール様。今日もお美しいのだが…………… 顔が少し煤けている。綺麗な紅銀の髪の毛も焦げている。そして____
ちら、と執務室…………"だった場所"を見る。目の前の部屋は…………もう滅茶苦茶だった。一室丸ごと焦げていて、窓があった場所には大きな穴が空いている。
なんでも、アミィール様とアルティア皇妃様が執務室にて大喧嘩したそうで。俺も自室に居て、大きな揺れと爆発で慌てて駆けつけてきたのだ。
そしたらこの有様で……………………驚いたのだが、俺が知らないだけでこの城はこういうことがわりとあるらしく、粛々と城の者達が片付けをしている。
アミィール様が無事でよかったけれど……なんというか、やっぱりこの城は普通ではないんだな、と実感したし、アルティア皇妃様になにかお願いするのはやめようと思った。
*作者から読者様へ~200話記念~
中途半端でありますが、お陰様で200話を迎えました。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価を頂きとても嬉しいです。
100話から比べると、書きたい部分が書けてきてるように思いますが、未だに妖精神や精霊が出てきていないということは、そういうことです。
未だ中盤なのかさえも分からず、大まかな流れしか決まっていないので考えながら書いていこうと思います。
ブクマ、評価など貰えると励みになるのでよろしければ、よろしくお願い致します。
では、続きをお楽しみくださいませ。




