表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/470

すっかり慣れた主人公

 




 ラフェエルはセオドアを遠くから見ながら、考える。




 あまりに綺麗すぎて、関わり方がわからないのだ。…………私達一族は『生贄』として血を浴びてきた。アルティアの先祖は『龍神』としてその魂を喰らってきた。……………あまりにも醜く、穢れた道しか知らない。だから、私達の娘は同じような道を選んだ。




 だが。



 あの男は_____かけ離れすぎているのだ。血を見ただけで青くなり、かすり傷だけで怯え、……それなのに、"人間の心"がわからなかったアミィールは、あろう事かあの男を好いたのだ。




 最初は信じられなかった。………けれど、こうして関わっていくと、わかるのだ。




 血を浴びすぎた私達は、無意識にあの男の持つ『綺麗さ』を求めてしまっている、と。




 あの男と話しているだけで自分が少しマシに見えるのだ。血を浴びている事実を忘れ、罪を忘れることが出来る。………もうすっかり、この城には居なくてはならない男になっている。



 だが…………………サクリファイス大帝国皇族になったからには伝えねばならない。



 我々がどれだけ罪深い存在かを。………どれだけの罪を犯しているのかを。



 しかし______





 「……………ラフェエル皇帝様?」




 気づいたら、リーブが心配そうに顔を覗いてきていた。私はセオドアから目を逸らし、口を開いた。




 「……………行くぞ」



 「は」





 ラフェエルは歩き出す。

 あの男にどう、自分たちの罪について話せばいいのか考えながら____…………










 * * *








 「~♪」




 セオドアは鼻歌交じりに花の苗を花壇に植えていた。久しぶりに大好きな土いじりが出来て幸せなのだ。




 ……………最近、バタバタしていたもんな。執務も忙しく、大人達に絡まれて…………そりゃあ、アミィール様と甘いひとときを過ごしているおかげで毎日幸せだし、相変わらずこの城に住む人々は優しいし不満などはない。



 けれど、土をいじれなかったのは辛かった……!

 季節が冬ということもあって、自重してた。………もう春だ。これから沢山この庭園にも花が咲き乱れる季節がくる。そして、その花を愛でながらアミィール様とお話出来れば、とても幸せだろうな……………





 もう結婚して2年目を迎える。結婚しても愛が冷めることはなく、それどころか増す一方で。今では触れているだけでは満足出来なくなるくらい、アミィール様のことを求めている。



 俺がこうして幸せな気分で居られるのも、全部最愛の妻のおかげなのだ。



 だから日頃の感謝をしたいのだが、………思いつくものは殆どあげてしまったような気がする。お菓子も小物も、全部喜んでくれた。次は何をあげようか、………なんて考えられるのも、ひとつの幸せだよな____「セオドアく~ん」…………げげっ。




 悪魔の声がして、思わず背筋が伸びる。この2年で身についた防衛本能が『面倒くさいことが起きる』と言っている。



 逃げたい。よし、逃げよ___「セーオドアくぅん!」…………




 立ち上がった所に無情にも絡まる細い腕。そして、黒い髪…………もう見なくてもわかる。




 「……アルティア皇妃様、お戯れは本当におやめください……」




 セオドアは何もかも諦めたような絶望的な顔をして振り返ると___愛おしい御方によく似た美女、義母でありサクリファイス大帝国皇妃のアルティアがいた。

















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ