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皇帝から見た主人公

 



 とある日のこと。




 「ラフェエル皇帝様、行きましょう」



 「ああ」





 サクリファイス大帝国皇帝、ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスは珍しく庭園に居た。アミィールとアルティアが使う龍化部屋の改築状況を見に来たのだ。





 龍___龍神の話は国家機密中の国家機密だ。サクリファイス大帝国に龍神の末裔が居ることに関しては21年前に生きていた人間には周知の事実なのだが、それ以降に生まれた人間に知らせるわけにはいかない。



 ましてや、自分の娘であるアミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスが龍神の血を受け継ぎ、龍の姿になれることなど知るものはほとんど居ない。




 それだけ大事にしてきたし、これからも大事にすると決めている。………本当は『任務』も辞めさせたいほどだと言うのに、あのきかん坊はやると決めたら中々辞めないからな。




 とはいえ、それをやらなくなる日は近いのかもしれない。



 何故なら_____




 「……………む?」





 ラフェエルの足が止まった。視線の先には____群青色の髪の、控えめな藍色の服を着た男。緑色の瞳を輝かせながら花壇を弄っている。



 _____セオドア・リヴ・ライド・サクリファイスだ。その前は『セオドア・ライド・オーファン』と名乗っていた。ヴァリアース大国で代々宰相を務めてきたオーファン公爵家の次男坊だ。




 その息子がサクリファイス皇族に入って、もう1年が経とうとしているが…………正直、未だに関わり方がわからない。




 2年前、アミィールが無理矢理婚約者にして連れてきた時こそ毛嫌いしていたのだが、あらゆる生き物の命を操れる"治癒血"の持ち主だとわかり、それだけで結婚を認めた。



 最初は手元に置いておけば戦争の種にならない、おまけにアルティアやアミィールを苦しめる『代償』や『呪い』を軽減できるからという理由だけだったが……………今では、違うモノになっていた。




 「ラフェエル皇帝様、どうなさい…………嗚呼、セオドア様でございますか」




 側近のリーブが私の元に来てセオドアを見る。その横顔はまるで我が子を見るような雰囲気があった。その顔で、語り始める。





 「ラフェエル皇帝様は初めてご覧になられましたか?セオドア様はいつもこちらにて、この庭園を管理してくださっているのです。


 ………この庭園は、過去の遺物ですが…………」





 そう、此処は過去の遺物なのだ。

 20年前まで居た無能な皇族達が自分の権力を振りかざす為に作った箱庭だ。壊してもよかったが妖精神達が『自分達が管理するから壊さないで欲しい』と泣きついてきたから残していたのだ。



 そこで、男子とは思えないほど幸せな顔で身体を泥だらけにしているのだから滑稽である。




 そう思っているラフェエルを横目に、リーブはしみじみと言う。



 「………セオドア様はとても御心の綺麗な御方です。従者や兵士も、………国民でさえ彼を愛し、慕っております。誰に対しても異常な程に丁寧かつ寛大で優秀であらせられます。



 それに___私達のように手を血に染めておりません」




 「…………………」




 リーブがお喋りになるのは、それだけ認めた相手だからだ。…………しかし、そんなことを言われずとも、もう分かっている。




 あの男は女々しく優しすぎ、か弱い。サクリファイス皇族とは縁遠い綺麗な手をした男だ。……………それなのに、血の匂いしかしないこの皇族に、自ら入ってきた。




 それは……………私達がおぞましい、血の匂い漂うことをしていると知らないからだろう。だからあのように笑っていられる。か弱くいられる。………綺麗で、いられる。


























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