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愛される赤ん坊

 



 「ぶぅー!」



 ヨウが来て四日目。

 ヨウは鍛錬場に設置されたベビーベッドでバタバタと暴れている。



 「ヨウくん!」



 それに気づいたセオドアは剣を投げ捨て上半身裸のまま、ヨウを抱き上げる。



 いくら子供を預かっているとはいえ、仕事も教育も疎かにしない。それら全ては愛しのアミィール様と愛しの家族、愛しいこの国を守る使命は全うしなければならない。



 とはいえ。



 「ぶー!ぶー!」



 「はは、そんなに頬を膨らませないでおくれ」



 セオドアは優しくふぐのように頬を膨らませるヨウを撫でる。

 ……………最初こそ、どこに行くにも怯え、どんな人にも怯えていたこの子は、どうやら年相応に甘えたがりらしく。10分に1度はこうして『ぶー!』と俺を呼ぶ。それは愛らしいのだが…………




 「セオドア様、鍛錬の途中ですよ?」



 「う…………」




 ガロは申し訳なさそうにそう言って近づいてくる。………そうなのだ、仕事ややることは一向に進まないのだ。これも仕方ないことなのだが…………



 言われてシュン、とするセオドアを他所に、ガロはくすくすと笑ってヨウの頭を撫でた。



 「ですが、こんなに愛らしい子供に呼ばれては、手も止まりますね」


 「す、すみません………」



 「いいのです、注意は形式的なものなので。ねえ、ヨウ様」




 「キャッキャ!」



 …………四日居て、ヨウは沢山笑うようになった。このとおり、ガロに撫でられても_正確に言うとリーブとラフェエル皇帝様、アルティア皇妃様、ガロ、俺、アミィール様だけなのだが_素直に撫でられるのだ。



 小さい子供というのは繊細で壊れやすいが、ちゃんと愛情を持って接すれば短時間でも顔つきは変わる。今は少しずつレイやエンダー、他の従者が近づいても威嚇はしない。



 少しずつ、けど早く変わっていくヨウが我が子のように可愛い。



 そう思っているのは俺だけではなく。



 「セオドア様」



 「あ、リーブ様、どうなさいました?」




 そんなことを考えていると、ラフェエル皇帝様の側近・リーブが来た。その手には___赤ん坊が遊ぶガラガラ。




 「それは?」



 「ラフェエル皇帝様が準備した物でございます。『鍛錬の間や執務中はこれで遊ばせろ』と、言伝を頂いております」



 「あ、ありがとうございます…………」




 ラフェエル皇帝様直々にこのようなプレゼントを頂ける。だがしかし、これは初めてではなく………




 セオドアは玩具を受け取ってから、ちらりとベビーベッドを見る。ベッドには…………たくさんの玩具が。これら全てラフェエル皇帝様からのプレゼントである。一日に3回はこのようにプレゼントを与えるという溺愛ぶりだ。



 なんというか、ヨウは凄いな?というか………



 セオドアは苦笑いしながらそれを受け取り、『はい、どうぞ』とヨウに手渡す。




 「うきゃーっ!」



 「いた、いたた」



 ヨウはそれを受け取るなり目を輝かせながら振り回して遊ぶ。そのダメージが俺にも来る。…………愛おしい痛みだから全然いい。むしろ、幸せだな。



 セオドアはガラガラが顔面に当たっても顔を弛めていた。







 * * *





 もちろん、溺愛しているのはラフェエル皇帝様だけではない。




 「ヨウちゃ~ん!」




 「キャッキャッ!」




 「アルティア皇妃様!危のうございます!」




 必死に止めるセオドアをよそに、これでもかと言わんばかりに高い高いをしているアルティア。



 …………というかもはや空に向かって投げている。ちゃんと浮遊魔法がついているから落ちる心配はないが、それでもこんな乱暴な扱いはいけない。




 「アルティア皇妃様!お戯れは………!」



 「細かいわね~、性格までアミィールに似なくてもいいものを。


 こぉんなに笑顔なんだよ~?」



 そう言ってアルティア皇妃様はヨウをキャッチして俺を見る。その顔はこれでもか、というくらいゆるゆるだ。



 「ね、セオドアくん、今から城の屋根に行こう!この国を一望させよう!」



 「な、い、いけませんって!」



 「はーい、強制連行~!___転移魔法」






 セオドアに有無を言わせず、アルティアと共に連れていかれたセオドアは、アミィールが助けに来るまで屋根に引っ付いて立てなかったとさ。


















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