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皇女はビビってる

 





 「………………………」




 「ぶ?」





 「…………………………」





 夜、いつもの甘い空間には緊張と沈黙が走っていた。理由は1つ、アミィール様だ。


 約束通りアミィール様は俺の部屋に来た。…………のだが、ヨウを抱く俺の側からだいぶ離れてこちらを見ているのだ。おかげでいつものお帰りのキスもしていない。




 とってもしたいし寂しいけれど……………アミィール様は『自分が穢れている』といつも言っている。その根は深く、すぐにヨウを受け入れること………というか、触れることは出来ないのだろう。




 なんとかしてあげたいのだが、こればかりはすぐにどうにかできるものでは無い。時間をかけて、ゆっくり、じっくり向き合っていかなければならないのだ。




 とはいえ、希望がない訳では無い。




 「……………………」




 アミィール様の黄金の瞳は俺とヨウを交互に見ている。RPG風に言うなら『アミィール様 が仲間になりたそうにこちらを見ている! ▽』状態なのだ。つまりは子供が嫌いという訳では無い、本当に自分が触れていいのか?という戸惑いなのだろう。




 ならば、俺から近づくしかない。





 「アミィ」



 「………!セオ様、そ、それ以上は………!」




 「……………!」




 少し近づいただけで顔を赤らめるアミィール様。………お?なんか、なんかいつもと立場逆転していないか?いつもは俺がアミィール様の言ったように『それ以上は!』と言う。それはもう乙女のように。



 けれども今俺はアミィール様のように迫っていて、アミィール様はいつもの俺のように困っているような嬉しいような気持ちに襲われているのだろう。





 ………やばい、すごく、すごく可愛い…………


 アミィール様がいつも俺を困らせる気持ちが少しわかる気がする。愛する御方のこの態度、すごくソソる。なんか、俺の男な部分がもっとしたい、と囁いてくる。




 「…………どうしたんだい?アミィ?」



 「う、うう……今日のセオ様は意地悪です……!」




 そう言って真っ赤になって涙目になるアミィール様。あ、やばい、すごく今抱きたい………?





 そう思った時、腕にいたヨウがするり、と腕から抜けて、よちよちしながら_____アミィール様のお膝に触れた。




 「………………!」




 アミィールはこれでもか、と目を見開いている。少し怯えている美しい女に、ヨウは黒い瞳称えた顔を上に向けて首を傾げてみた。




 「うぅー?」


 「せ、セオ様、こ、こういう時は、どどど、どのようにすれば…………」



 「…………ふふっ」



 その様子に、セオドアは思わず笑みを零した。

 いつもぐいぐいくる、かっこよく可愛く凛々しい俺の奥さんが、赤ん坊1人にここまで取り乱しているんだ。………可愛すぎて、ずっと見ていたい。



 「~ッ!」




 珍しいセオドアの控えめな笑みと温かい小さな体温と瞳に、アミィールは更に顔を赤くする。言葉にもならない悲鳴をあげて、取り乱している。




 ずっと見ていたいけど、さすがにいじめ過ぎたらアミィール様が逃げ出してしまうかもしれないな………



 そこまで思い至ったセオドアはアミィールとヨウに近づいてきて、ヨウを優しく抱き上げて言う。



 「こういう時は、こうして抱き上げてあげるんだ。ほら、ヨウも安心した顔をしているだろう?」



 「ええ………、すごいですわ、セオ様………わたくし、不甲斐ないです………」



 「そんなことないよ。………あ、そうだ、アミィも抱いてみないか?」




 「!」









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