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※人たらしスキルは健在です

 





 「_____で、その子供を連れてきたわけか」




 サクリファイス皇城、セオドアの自室。執事・レイはそう主人のセオドアに言う。



 セオドアは赤ん坊を大事そうに抱きながら、困った笑みを浮かべて頷いた。



 「ああ。アルティア皇妃様のお願いだから答えねばと思うんだけれど…………俺は赤ん坊のあやし方などわからなくて、困っているんだ」




 そう、これもひとつの手助けだとわかっているのだが、あいにく前世を通して子供と関わりがない。前世で保父だったこともなければ人の子の親になったことすらない。



 そんな困り果てているセオドアを見て、レイは思う。




 なんというか…………流石だよな。子供は大人をよく見ているし、こんなに虐待された形跡があるならなおさら大人が怖いはずだ。現に俺等は近づいただけで睨まれた。でも、セオドアにはべったりとくっついている。…………セオドアは乙女だが、それでも心が優しく、誰かを傷つけることなどしない、いや、出来ない男で。




 だからこそ、好かれるのだろう。そんな男に仕えられるのは誉高い事だな。




 そこまで考えて、ふ、と笑った。



 「いいじゃないか、俺の仲のいい侍女達にも声をかけて手伝ってもらおう。アルティア皇妃様に聞いてきてもいい。


 それよりも、赤ん坊の扱いをお前が覚えなくてはな…………これからのために」




 「これから?」



 セオドアは首を傾げる。一方レイはにやにやしながら言う。



 「………………アミィール様との御子ができた時のためさ」



 「____ッ!」




 セオドアはそう言われると赤ん坊の口からミルクを抜いて顔を一気に赤くした。




 そ、そんなのまだ早い!俺はまだ18歳で子供なのだ!貴族の成人が16歳でも小さな命を授かるには俺が未だ未熟な身の上過ぎるだろう!あぁぁぁ、でもきっと可愛いんだろうな、アミィール様に似て可愛くて美しくて愛らしくて………女の子なら花のように美しくなり、男の子なら龍らしくかっこよくなるのだろう…………考えただけで顔がにやけてしまう…………




 「ぶ」



 「あ、ああ、ごめんよ、ヨウくん。ミルクをもう少し飲もうな」




 セオドアは顔が真っ赤なまま再び赤ん坊にミルクをあげる。ちぱちぱと吸っているのを見ると不純な気持ちが清められる気になる。



 とはいえ、アミィール様のことを考えないのは無理な話で。



 …………アミィール様がこの子を見たらどう思うのだろう。太陽のように笑いかけ、優しく触れるのだろうか。ヨウはどうやら男の子だし、触れていたら嫉妬してしまいそうだ………けど、アミィール様が子供と戯れている光景は見てみたい。俺はどうすればいいのだ……………



 そんな贅沢な悩みにふわふわと乙女思考爆発しているセオドア。口に出ているぞセオドア。…………まったく、俺の友はなんでこう抜けているんだか。いつぞや言っていた思考を口に出さないよう意識して治すというのは、きっと忘れているのだろうな。




 でも、コイツの考えもわかる。アミィール様のような心優しく美しい少女が子供を愛でる姿はきっと聖母のようだろう。俺も見てみたい。




 そんなことを男性陣が思っていると、コンコン、とノック音がした。それを聞くなりセオドアは赤ん坊を抱きながらぱあ、と顔を明るくする。赤ん坊より子供っぽい。




 アミィール様がこの明るい時間に来てくれた…………?さっそく俺が見たい光景を見れるじゃないか!




 そう思って『どうぞ!』と言うと、入ってきたのは_____アミィール様ではなく、その専属侍女のエンダーで。



 「エンダーか」



 「……………あからさまにガッカリしないでくださいます?」




 「す、すまない、そういうつもりでは………!」



 淡々と言われた言葉に背筋を伸ばす。そ、そんなにわかりやすくガッカリしていたか?俺…………



 もう頬だけでは足りないと言わんばかりに耳を赤らめるセオドア。エンダーはそのセオドアの胸にいる子供を見て………目を細めて、主人に言われた言伝を紡いだ。



 「セオドア様、アミィール様からの言伝です」

 



 「…………言伝?」


 「はい。『わたくしは向こう1週間別室にて過ごします』…………だそうです」




 「……………は?」












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