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皇女の身体の秘密

 




 ダーインスレイヴの言葉がわからなかった。

 呪い?脆い体?………そんなの、聞いてない。



 「ダーインスレイヴ………どういうことだッ!」



 セオドアは珍しく憤っている。ダーインスレイヴはそんな小さな子供を憐れむような視線で見下している。



 ……………やはり、アミィールは伝えていなかったか………………なにも、なにも知らないんだな………………




 俺が教えてもいいが、…………俺よりも適任の奴がいる。



 「_____アルティア、ラフェエル、教えてやれよ」



 「___!」



 ダーインスレイヴは振り返らずにそう言うと、アミィールの部屋に皇帝夫婦が現れた。



 アミィール様が倒れたのをどこからか聞きつけてきたのだろう。けれど、そんなのどうでもよかった。



 俺は、立場も身分も状況も忘れて義父母を見た。




 「……………ラフェエル皇帝、アルティア皇妃………どういうことですか」




 「____そんなに睨まないで頂戴。


 ちゃんと、話すわ」





 アルティアは睨みつけるセオドアにそう言って、ゆっくりアミィールの眠るベッドに向かって歩く。




 「セオドアくん、………私が龍神なのは知っているわよね、龍神ではなく、龍神の元後継者ということも知ってるわよね。


 …………私は、元後継者として、10万年生きながらえていた初代龍神と共に___1度、死んでるの」



 「……………!」




 何を、言っているんだ?

 最初に聞いた時、理解できなかった。だって、アルティア皇妃様は居る。いつも笑ってふざけて……生きているじゃないか。そんな冗談を真に受けている暇はない。



 「冗談は___「私は1度死んだ。けど、ラフェエルに助けられて生き返ったわ」………」




 俺の言葉など聞かず、アルティア皇妃様はそ、と苦しむアミィール様の頬に触れた。そして、続ける。



 「奇跡的に復活を果たしたけれど、私の体は____弱っていた。元々の身体は木っ端微塵になったから、身体を作ったの。けど…………私は元後継者の純血な龍神。膨大な魔力を引き継いでいるから新しい体に馴染まなかった。



 ___セオドアくん、お勉強の時間よ。

 その私の胎内で育った子供は____どうなると、思う?」




 「…………………」




 アルティア皇妃様はそう言って俺を見た。

 ……彼女の言うことが本当であれば……



 セオドアは憤る気持ちを抑えて、考える。そして………みるみると顔を青ざめさせた。



 アルティアは『そろそろ答え合わせをしましょう』と言って、アミィールの頭を撫でながら続けた。




 「_____アミィールは人間の血も混ざり、私の血をも持っている。そして私の魔力は人間の1000倍、私でも新しい体で苦しんでいるのに……その力を半人間で引き継いだこの子は……膨大な魔力を抑えきれないでいる。だから感情の昂りとかで熱が出て、意識を無くす。



 これが"代償"の正体よ」




 「じゃあ、アミィは………………!」




 「そのうえ」




 愕然とするセオドアに、無常にも畳み掛けるようにラフェエルが口を開いた。




 「_____10万年前、龍神を苦しめるために当時のサクリファイス大帝国の民は命をかけて龍神に"呪い"をかけた。


 その"呪い"は常に身体を蝕んでいる。呼吸するのも苦しい程にな。熱い鎖に縛られているようだと純血の龍神であるアルは言っていた。



 ____純血の龍神でもこれなら、……半人間はどうなる?」




 「っ、そんな…………!」




 ダーインスレイヴの手が胸倉から離れて、同時に俺はその場に泣き崩れた。そんな俺に、ダーインスレイヴは静かに、言った。






 「_____アミィールの身体は、これからどうなるかわからないんだ」




 「ッ、ああ…………!」




 知らなかった。


 俺は何も知らなかったんだ。


 アミィール様はいつだって俺に笑いかけてくれた。



 いつだって俺に時間を作ってくれた。



 こんな悲しいことがあるか?___俺は、何も知らなかったんだぞ?


 

 セオドアは声を上げて泣いた。

 それを3人は悲しげにしばらく見ていた。








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