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スペック負け確定

 




 「こんな所で何をしているんだい?」




 「あ……………」




 セオドアはクリスティドの優しい言葉に、戸惑った。

 …………噂をすれば、である。しかし、国王陛下という肩書きに相応しくない簡易的な服装で一瞬分からなかった………ではなく!



 俺は慌てて突き当たりを見る。先程の男達は未だにクリスティド国王陛下が結婚しない事を喋っている。こ、こんなの聞いたら、クリスティド国王陛下は怒ってしまうのでは…………!?




 「どうした…………ああ、あの重臣達の会話の事を考えているのか?」



 「……………ッ」




 クリスティド国王陛下も俺と同じように男たちを見てそういった。けれど、怒っている様子はない。寧ろ、『またか』なんて呆れているようにさえ見える。



 他国に新婚旅行に来て、他国の裏事情を立ち聞きした俺ははしたない………!あ、謝らなければ!



 「も、申し訳ございません!立ち聞きなど男として、人としてしてはならないことだというのに………!」



 「ああ、いや、いいよ。気にしないでくれ。君が何故ここに居たのかは知らないが、あんな話をこのような場所でしているあの者達に非がある。そして、その話をさせている大元は___私だ」




 「…………………」




 クリスティド国王陛下は爽やかな笑みを崩して、少し寂しそうな顔をした。…………イケメンの寂しそうな顔というのは何故こんなにも美しいのだろうか……………


 状況も忘れて見蕩れているセオドアに、クリスティドは再び爽やかな笑みを作り『よければ共にテラスに行こう』と声をかけた。








 * * *




 「………そうか、アミィール嬢が寝てしまって転移魔法が使えず、1人で城内を歩いていたのか」



 「も、申し訳ございません…………」





 テラスに着いて、星空を見ながらあそこにいた理由を話した。そうしたらクリスティド国王陛下は楽しそうに笑って『大丈夫だよ』と言ってくれた。




 「転移魔法を使える方が珍しいのだから、普通はこうして自分の足でここまで来るしかないものな。安心してくれ、君の力のことは私しか知らない事だ。


 なにかこの城で言われたら"クリスティドの新しい側近"だと言ってくれれば大抵は見過ごしてくれるから使っておくれ」




 「そ、そんな!恐れ多い………!」




 セオドアはすっかり恐縮状態である。

 ………けれど、こうして言葉を引き出してくれるクリスティド国王陛下はやはりいい人で。人柄がもう爽やかというか匂いも爽やかというか。完璧なイケメンというのはすごい。



 …………その人の人生を乱してしまった自分に嫌悪感を抱く。確かに、アミィール様は俺を愛してくれているし、仮に俺に出会わなくても別ルートに行く可能性はあった。けれど、『クリスティドを選ぶ可能性』を俺が奪ったのは、紛れもない事実だ。




 アミィール様だって、凡人な俺なんかより一国の国王と結婚した方が幸せだったに決まっている…………そう自分で考えて胸が痛くなる。



 ____なんで俺はギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公なんかに転生したのだろう。



 どうせだったら、不細工でもハーレムが作れなくてもいいからアミィール様の地位に見合うような男になりたかった。



 そんなことを思い暗い顔をするセオドア。クリスティドはその様子を見て、口を開いた。



 「…………アミィール嬢のことでも考えているのかい?」



 「ッ、何故それを………あっ」




 セオドアはそこまで言って口を手で塞いだ。な、なんで俺は口まで軽いんだ!隠し事が下手にも程があるだろ!恥ずかしすぎる………!




 口を隠しながら頬を赤らめるセオドアをクリスティドはくつくつ、と声を殺して笑ってから空を見上げた。




 「恥ずかしいことではないだろう?愛する人のことを考えると一喜一憂するのは当然だ。愛があればあるほど尚更そうなるだろう。だから、恥ずべきことではないよ。


 寧ろ素晴らしいことだ」




 「……で、ですが………私のこの思考は、醜いのです」



 「醜い、というと?」




 クリスティド国王陛下の声は優しい。言葉の節々に俺への気遣いを感じる。だからだろうか、口が軽くなっていく。




 「……………私は、アミィール様を心の底から愛しております。けれど、クリスティド国王陛下のようなお優しい方を見ていると…………アミィール様の幸せを考えたら、クリスティド国王陛下のような御方を選ぶべきだったのではないかと………」




 ぽつり、ぽつりと零れていく本音。クリスティドはそれを聞いて、『ふむ』と少し考える素振りを見せた。










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