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ハイスペックな妻

 


 「えっ」




 アミィール様の言葉に声を漏らしてしまう。だってそれは、不可能である。サクリファイス大帝国からシースクウェア大国に行くには1ヶ月はかかるからだ。俺たちの与えられた新婚旅行の時間は2日。



 どう逆立ちしても無理なのである。




 驚いた顔を向けるセオドア様。考えていることが手に取るようにわかる。馬車で行ったらきっとシースクウェア大国に2日で行くなどと無理でしょう。



 ですが、馬車でないのなら。




 アミィールはそう考えて、セオドアにしか見せない優しい笑みで言う。





 「大丈夫です。わたくし、これでも何度かシースクウェア大国に行っていますし、場所が分かりますので転移魔法で行けますわ」



 「転移魔法………!?」



 優しく笑うアミィール様。転移魔法が扱えるのは初めて聞いたから驚いた。


 転移魔法というのは自分の思う場所に瞬間移動できる魔法である。アルティア皇妃様やダーインスレイヴ様はいつも簡単に使っているが、それは治癒魔法よりも高等魔法であり、それを扱うには転移する場所を正確に理解していなければ転移はできない。そしてたくさんの魔力を使う。



 人智など簡単に超えているサクリファイス大帝国で麻痺しかけるが、普通に生きていれば名前を聞くことも無い使用不可能に近い魔法なのである。



 それ故に、縛りも多い。




 それを知っているセオドアは心配そうに聞く。



 「仮に転移魔法を使えたとしても、禁術じゃないか。使ってはならないと決まっているよ?」



 「ふふ、セオ様は本当に真面目ですね。心配であれば、わたくしがお父様に許可を貰います。


 お忘れでしょうか?これでも、サクリファイス大帝国は一番力を有している国、人を無闇に傷つけなければ処罰はありませんし、そもそも禁術扱いなのは他の方々が使えない、或いは使ってしまっては自分の身が危ぶまれる可能性があるからです。



 その点、わたくしはこれでも強いのです」




 「う…………」




 そう言ってにこやかなアミィール様に頭を撫でられる俺。…………アミィール様の強さは俺も知っている。元々出会った時から知っていたし、その上皇配ともなると兵士や従者達の会話でどれだけ強いかなども日常的に聞ける。




 剣術も武術もラフェエル皇帝以外に負けたことがなく、魔法もアルティア皇妃様以外に負けたことがないと。この2人以外に手傷どころか膝をついたことはないなどとまことしやかに囁かれているほどだ。



 だから、アミィール様が『大丈夫』と言えば大丈夫じゃなくとも『大丈夫』になってしまう。



 ………本当は、俺が守らなきゃなのにな。




 「…………セオ様?」





 セオドアはそこまで考えて、アミィールを優しく抱き寄せる。お風呂上がりだから俺と同じミントの石鹸の匂いがする。



 それを嗅ぎながら、ちゅ、と頬にキスをして紅銀の髪に顔を埋めた。




 「…………私は格好悪いな。アミィを守りたいのに、アミィの足元にも及ばない」



 「そんなこと、ありませんわ。


 わたくしが強く在れるのは___セオ様が居てくれるからです。セオ様が居なければ、わたくしは頑張れませんもの」




 アミィール様はそう言って抱き締め返してくれる。………あべこべな夫婦だけど、それが俺達だから。



 俺も、アミィール様を守れるようになりたいな。




 そう思いながら、首筋に吸い付いた。
















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