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主人公は嫉妬する

 



 _____その夜。





 「セオ様、ただいま帰りました」


 「おかえり、アミィ」




 夜、いつものように執務を終えた愛おしい人が帰って来た。お互いの頬に唇を落とすのはいつものこと。すっかり習慣化してしまった。



 小さな幸せで疲れが吹き飛ぶんだから、やっぱり俺はこの人が好きなんだな。



 そんなことを思いながら頬を緩めるセオドアを横目に、アミィールは後ろに控えているレイを見る。




 「レイ様、例のものは?」



 「こちらに」



 「?」




 アミィール様がレイに話しかけるのは珍しい。なんなんだ?………もしかして。




 「きゃっ」



 セオドアはレイの方を見るアミィールを半ば無理やり抱き寄せて、睨む。



 「___レイ、アミィは俺の妻だからな」



 「!」




 セオドア様は何を考えたのか、そうおっしゃった。とても低い声に怒りを感じ取る。…………もしかして、レイ様との関係を疑ってらっしゃるのかしら………?



 そんな些細な事に胸を熱くするアミィール。しかし、セオドアの心の中は怒りに満ちていた。



 ____いくら友といえど、この人は渡さない。従者に嫉妬なんてみっともないかもしれないけれど、レイは凄くモテるんだ。


 金髪のツンツン頭に茶色の瞳。女みたいな顔をしている俺よりも男らしい顔をしていて、ガッチリした体躯も立派だ。しかも執事の割には堂々としていて、俺と違って男女問わず親しくなれるし、仕事もできる。


 俺の執事という事を差し引いても優秀で、まだサクリファイス大帝国に来て2年も経ってないのに、物凄い速さで出世している。つまり、アミィール様が恋をしても可笑しくない程の高スペックを持ってるんだ。


 ………レイは家族以外で俺が心を開けるたった一人の執事で友だけれど、それでもこの御方は俺の一番大切な女だ。どんなに大事な存在でも、この御方だけは譲れない。譲りたくない。




 レイはすっかり嫉妬モードに陥っているセオドアの視線を無視して、瓶を見せてきた。




 「?なんだそれは」



 「セオ様、レイ様にワインを準備していただいたのです」



 「え」



 俺の予想、大外れ。安堵と共に恥ずかしさが込み上げる。顔が一気に熱を帯びた。



 顔を真っ赤にする主人に呆れながら、レイはワインを机に置き、手際よくグラスを並べ、扉の前に立つ。




 「では、私はこれで。


 セオドア様、アミィール様、…………良い夜を」




 それだけ淡々と言って去っていくレイを見送ってから俺達は手を繋いでソファに座った。



 アミィールはにこにこしている。




 「セオ様、嫉妬をしてくださったんですか?」



 「……………ッ、そ、それは………その…………お恥ずかしい」




 ゴニョゴニョと言葉を濁すセオドア様が可愛らしくて幸せになる。本当にこの人は可愛い御方。



 そんなことを思いながら、ワインを見る。

 ……………レイ様に教えて貰ったのだ。

『セオドア様にお酒を飲ませてみてください』と。残念ながら、理由は教えてくださいませんでしたが、長年の友だという彼の言うことだ、何かあるのだろう。




 「セオ様、お付き合い願えますか?」



 「あ、ああ。しかし………私は飲んだことがないんだ」



 「そうなのですか?」



 ______そうなのだ。

 前世でお酒は20歳からだが、この世界は違う。貴族の嗜みとして20歳を超えなくても飲むことはできるが、父親に『お前は飲むな』と止められていた。理由はいくら聞いても教えて貰えず、飲めない事で困ることもないからそのままだった。



 でも、アミィール様が誘ってくれているならお付き合いしたい。




 「……………私でよければ喜んで。初めてなので酔ったらごめん」



 「ふふ、大丈夫ですよ。この部屋にはわたくし達しか居ないので。


 では、飲みましょう…………ッ」



 「……………」



 ワインのキャップを開けられなくて力ずくで引っ張ろうとするアミィール様。………なんというか、こういうのを見ると和む。アミィール様は強いし美しいけれど大雑把なところがあるのだ。そんな所も可愛いのだが。



 セオドアはふ、と笑みを浮かべて口を開く。



 「私がやるよ。アミィ、貸して」



 「は、はい…………すみません」





 しょんぼりするアミィール様。………本当に可愛いなあ。俺の嫁!って叫びたい気分だ。




 そんなことを思いながらワインを開けたセオドアでした。











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