なんやかんやで巻き込まれる
「~♪」
庭園で花に水をあげながら鼻歌をする群青色の髪、緑の瞳のこの男はセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスである。
ギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公でありながら、ゲームに出てこなかったキャラであるサクリファイス大帝国皇女に見初められ、結婚を果たした彼は現在趣味の花の手入れ中である。
____アミィール様と結婚して半年が経った。俺は毎日幸せである。美人でイケメン過ぎる奥さんに、ツンデレな義父、奔放な義母、城内の従者達との関係も良好。不満って何?って感じである。
まさか乙女男子の俺がここまで幸せになれるとは思っていなかったから戸惑う事もあるが、それでも平和に____「はあーい、セオドアくーん♪」…………う。
セオドアはびくり、と肩を揺らす。
この声の持ち主は____この城で一番強く、自由奔放かつ滅茶苦茶で平和を平然とぶち壊す人?だ。
それ故に知らんぷりはできず、セオドアは引き攣った笑顔で振り返る。
そこには、セオドアの愛する人……………によく似た、黒髪、黄金色の瞳の義母であり皇妃のアルティアが居た。
「こ、こんにちは、アルティア皇妃様」
「こんにちは!今日も庭園のお世話ありがとーう!」
「うわっ」
アルティア皇妃様は俺に抱き着いてくる。俺を子供として可愛がってくれているが、こんな所を愛する人に見られたらまた甘いおしおきをされるし皇帝に見られたら睨まれると思ったセオドアは慌てて離れようとする。
だがしかしこの滅茶苦茶な皇妃はそれを許さず、その肩を抱いた。
「あ、アルティア皇妃様!お戯れが過ぎます!」
「そんな固いこと言わないの~!今日は!セオドアくんに用があって来たんだから!」
「はい?」
「取り敢えず場所を移動しましょうね~♪」
「わ、ちょ、ええ!?」
俺は何が何だか分からぬまま、アルティア皇妃様に攫われた。
* * *
ひまわり畑にて。
「…………………………………………」
セオドアは固まっていた。
それはもう、石像のように。
しかし、石像と違うのは___大きな緑の瞳が涙に滲んで、熟れたトマトのように真っ赤な顔。
目の前には_____アルティア皇妃様と、黒と白のごまプリンのツインテール、黒い瞳の聖女・フラン・ダリ・ジュエルズ・セイレーン様と深緑の髪に黄緑の瞳のヴァリアース大国女王陛下・エリアス・ラピュード・ヴァリアース様。
この豪勢な面子が全員口角を上げて俺を見ている。それだけでも緊張なのだが、こんなに顔が熱いのはそれだけの理由じゃない。
ちら、と自分の服を見ると____紅銀色のフリフリ、リボンをふんだんに使いレースもあしらわれた綺麗なドレス。
俺は______今、この大人達の手により女装させられてます。
「アーーーッハッハッハッ!やっぱり私の息子は可愛いわ!」
ゲラゲラと笑っているアルティア皇妃様の横で、フラン様は目を輝かせて興奮し涙さえ見せている。
「本当にギャルゲー主人公ってイケメン……そしてイケメンは女装も似合う……なにこの腰の細さ……もう女じゃん……拝めますわ……」
「セオドア、貴方はとても美しいわ。流石、国を誇る美しいオーファン公爵家の息子ですわね」
そうふわりと笑うエリアス女王陛下……って!
「なんで!私が!女装などしているのですか!」
セオドアは顔を真っ赤にしたまま、ドレスの裾を握り大声で叫ぶように言った。
経緯はこうである。
アルティア皇妃様に攫われる→この3人が居て固まる→アルティア皇妃様がぱちん、と指を鳴らしたら勝手に服が変わった→フラン様は俺と同じ髪色のウイッグを被せて可愛いツインテールを結った→エリアス女王陛下が直々に化粧を施してくれた→俺、なにもできない←NEW! ▽




