皇女は旦那を誇りに思う
そう言ったセオドア様は、本当に幸せそうで。目的、役割に誇りを持つ人の顔。…………すごく、格好いい顔で。
愛する人の新しい一面に、顔が熱くなっていく。
…………嗚呼、やはりセオドア様は素敵な御方です。わたくしは子供の扱いなどわかりませんし、きっと、…………傷つけてしまう事しかできないから。
そう思えるセオドア様が、眩しくて、誇らしかった。
……………でも。
「……………お母様のようにはならないでくださいまし。セオ様がお母様のような性格になっても愛する自信はありますけど………
あの御方のように滅茶苦茶になるのは………」
「いや…………性格は私もなれない気しかしないよ…………」
大真面目にセオドアがアルティアのような性格になるのを想像して悩み始めるアミィールに、セオドアは苦笑いする。
アミィール様も少しズレてるよな…………そういう所も好きだけど。
セオドアはぎゅう、と一糸纏わぬアミィールを抱き締める。アミィールは悩むのを辞めて小さく笑う。
「ふふ、……………もう少し、営みを致しますか?」
「……………ッ、ああ。アミィが可愛くて………その…………」
可愛いと思ったらそういう気持ちになってしまったセオドアは、顔を赤くしながらも、アミィールに唇を寄せたのだった。
* * *
「うう……………筋肉がバキバキだ…………」
セオドアは自室のベッドでだらけていた。
…………………皇配というのは、中々にハードだと知ったのは結婚してからだった。そりゃあそうだ。次期皇帝の配偶者なのだから、忙しくないわけがない。
だがしかし、本当にハードなのである。
最近は孤児院にもしょっちゅう行くし、行かなければ執務室でアミィール様のお手伝い、そして夫教育、…………でも、楽しいのも事実で。
なんというか、この筋肉痛が愛おしい。
今までは婚約者として殆ど好きに過ごしてきてたけど…………仕事を、役目をやっていると自分も皇族になった気分になる。いや、皇族の仲間入りをしているのだけれど。
「………………ふふふふふ」
「……………セオドア、とうとう頭がおかしくなったのか?」
突然笑い始める主人を冷めた目で執事のレイは見ていた。
でも、気持ちはわかる。本人は嬉しそうにしているからなんにも問題はないんだが、頭がおかしくなるくらいには仕事をしている。
アミィール様と出会う前のセオドアだったら泣いていたのが目に見えるようだ。
けれど。
セオドアはサクリファイス大帝国に来て、メキメキと成長している。それは執事としても友としても嬉しいことだ。
「小さな頃、水たまりに足を突っ込んだだけで泣いてたセオドアが今では立派な皇配か…………」
「な、そ、そんなことなかったし!」
しみじみと語るレイの言葉に顔を真っ赤にして否定するセオドア。因みに事実である。
「あー面白い。アミィール様にお前の武勇伝でも語ろうかな~、セミの抜け殻を見ただけで泣き、おねしょをしただけで泣き、俺に茶化されただけで泣いてた話、アミィール様に聞かせたら、きっと"可愛いですわね"と笑顔を見せてくれそうだ」
「………………レイ、何が望みだ」
「………………女受けのいい可愛いお菓子」
「作るから言うな。絶対。墓場まで持っていってくれ」
セオドアは真顔で執事に口止めしたのだった。




